2012年9月8日の日没は17時59分。
ライブは日没とともにはじまります…といいつつ数分押しです。
開演の少し前、電話をするために外に出たら
あたりは夕暮れの色でした。
ライブハウスに窓があったらいいのになと思いました。
開演前には庄司輝秋のショートムービーと
なんとはなしに私が選曲した音楽がかわるがわる流れていましたが
開演の時刻には開演の曲に切り替わります。
やがて風の音が音楽に重なり、
読み手の水下きよしさんと、
執筆者兼効果音担当の川野康之さんの入場です。
この音楽の切り替えと入場のときだけ私がキューを出します。
ねじ巻きラジオです。
リハのときに私が水下さんに言ったことは
「いまよりゆっくり読む」「耳で聞いてわかりにくいコトバは丁寧に読む」
このふたつだけですが、ちゃんと実行しています。
信頼に値する役者さんです。
ネジもいい音です。
実はこの効果音用にチェコの古い目覚まし時計を買ったのですが
川野さんのオルゴールにはかないません。
藤本宗将くんの「リセット」読んだのは坂東工。
直川隆久さんの「you meet you」
初参加の地曵豪は練習を積んでいて危なげがありません。
古居利康さんの「丘の上の未来」は高田聖子ちゃん。
銭湯、狭いアパート、そういったストーリーの背景が
この人が読むと実感をともなってきます。
一倉宏さんの「流星になれたら」は本編でも坂東が読んでいるので心配なし。
途中、ひとつの空席に気づきました。
二次会の世話をしてくれるはずの中村直史くんの姿がありません。
外に出て電話だわっしょい。もしもし、もしもし、もしもしっ。
直史くんは時間を間違えて近所でお茶してましたわ〜〜(汗)
このライブ出演が決まって以来
村木仁が毎日毎日練習をしていた「麦畑」
しまいに子供が暗記してしまったという「麦畑」
いい加減にしろと嫁にも怒られた「麦畑」(嫁よ、すまん)
リハのときにあまりに練れてしまっていたので
それ以降の練習を禁じさせていただいた「麦畑」
仁ちゃん、着物まで買って気合いが入っていた「麦畑」
ライブも終わったし、もう練習していないだろうな〜。
そして福里真一くんの「人類、やる気をなくす」が
前半のトリの演目でした。
高田聖子ちゃんの読みかた、面白かったですね。
これは無感動無感情に読むのがいいのですが
なかなかむづかしいんですよね。
前半が終わって休憩時間です。
役者は席から離れ…
楽屋をのぞいてみたら、地曵とピアノの鈴木さんが休憩中。
聖子ちゃんは「月影番外地」の制作の人と出演者と歓談中。
実はですね、前半の時間は私の計算よりも延びていたんです。
計算では前半が40分弱、後半が50分、
いつも休憩時間が短いので、今度こそ30分の休憩を取るぞ〜と
計算しとったのですが、まあ一昨日の蕎麦みたいに延びました。
みんなの朗読もゆっくり丁寧になっていました。
ゆっくり読むことは誤魔化しがきかないということです。
しかも集中力を持続するだけの精神力と腹筋力が必要です。
ゆっくり吐き出された言葉が
客席に広がると同時に読み手の体内にも浸透して
凄まじいまでの緊張感、密度の濃い空間が形成されていました。
あまりの緊張にグラスの音を立てるのも遠慮して
飲み物が飲めなかったという感想をお客さまからいただきました。
本当に私が言うのもナンですが、凄かったです。
過去最高レベル、バリバリの緊張感でした。
やっぱりライブはこうでなくちゃです。
「なごやか」なんてクソくらえと実は思っている私は大満足。
お客さまは拍手のタイミングも失っているけれど
拍手がないから良くなかったなんて落ちこむ素人な役者はいないはずだし
やっぱり私は大満足。
満足しきっていたら、事務局大川泰樹くんがやってきました。
「どうします、押してますよ」
わかってるよぉ〜〜
「休憩、いつまでにしますか」
早めに切り上げるしかないかしらん〜〜
(この時点でちょっと押したい事情などあったのですが)
真剣な顔の事務局大川くんに促され、
休憩は10分早く切り上げを決め、
30分といいつつ20分の休憩になりました。
するとまた事務局大川くん。
「客が拍手のタイミングを失っていると森田さんが言ってます」
凄いよね〜、緊張感バリバリだもんね〜。いいよね〜。
「拍手ないと役者が息をつくタイミングがないと森田さんが言ってます」
あっ、そう…
う〜〜ん、別に息つかなくてもいいんだけど
窒息してくれても全然かまわないんだけど…
ともかく、いっぺんサクラで拍手をしてみることにしました。
そうそう、休憩時間が終わるころに
ちょっとトイレチェックしてくるわと言ったら
「大丈夫です」と大川くん。
ま、まさか女子トイレを…
「だいたいお客さんは席についてます」
休憩時間の終了前、
私はいつも女子トイレに残っているお客をチェックするのだけど、
大川くんは客席を数えたらしいです。
後半、またもや音楽が切り替わり、波の音が重なり
小野田隆雄さんの「波」読み手は高田聖子ちゃん。
これね、すごかったです。
すごいとしか言えない自分の言葉の貧弱さが情けないですが
2年前に読んだ「波」よりもさらにレベルアップしています。
神がかり的な「波」でした。恐るべし、高田聖子。
で、舞台はふたたび緊張感バリバリに…
そこに無理やり拍手を入れてみました。
拍手の音の大きさには地震あるんですが、私、手が大きいもんで。
なかなかお客さまがついてきてくれません。
しばらくは私ひとりでパチパチパチ…
それからお客さまがやっとパチパチパチ…
これ以降の拍手の誘導は大川くんがやってくれたのかな。
私やってません。
つづいて小野田隆雄さん「焚き火」読み手は水下きよし。
前半のアロハからシックな黒に衣装も替えています。
主人公の年齢設定と水下さんのかもし出す雰囲気が
ピッタリと合っており、印象深い仕上がりでした。
プログラムは進みます。
西島知宏さん「あるウサギの一生」読み手は地曵豪。
地曵がときおり見せる凶悪な表情を見て
これを読んでもらうことに決めた原稿です。
岡野草平くん「七番アイアン」読み手は坂東工。
軽薄なところを見せてくれとリクエストしておいた演目です。
門田陽さん「最後の選択」読み手は水下きよし
水下さんの「とりあえずキープ」のセリフがなんともかわいらしかった…
という感想は本人には伝えておりません。
途中、JZ Bratの谷口プロデューサーに「押しますっ!」と宣言し
了解を得ました。
さらに途中、ついにプログラムが届きましたっ!
休憩時間には間に合わなかったけれど、帰りに持って帰っていただこう、
ということで、事務局大川くんも一緒に楽屋でプログラム二つ折りの作業です。
すぐ終わりました。早いっ。
川野康之さん「カントクと神さま」では
仁科貴くんが焼き肉弁当を提げての登場でした。
この人は読むたびに違ったものを見せてきます。
本編で読んだのとライブのリハで読んだものは違う。
リハのときと当日リハがまた違う。
なにやらしといても面白いんでいいんですが
なんといえばいいのかなぁ、見せる朗読??
そんな感じがします。
ところで、この焼き肉弁当はどうしたんだろう。
仁科くんが食べたのかしらん。
佐倉康彦「紅いパスポート」読み手は高田聖子。
たいへんむづかしい原稿です。
主人公はどういう女か、いまどんな状態にあるのか、
読むときに考えなくてはならないことが多いのです。
この原稿は聖子ちゃんの課題でした。
数時間前の当日リハで出来上がっているのをきいて、さすがと思いましたが
これをクリアしたことで、あの凄かった「波」が生まれたのではないか、
なんかそんな感じがします。
最後の演目は、岩崎俊一さんの「夜汽車」読み手は地曳豪。
世界の滅亡と個人の終焉を扱ってきたこのライブの最後で
この演目だけが未来を見通す唯一の作品です。
地曵がどこまで情感を出せるのか、
ここは地曵の正念場でもありました。
こちらも追い詰めかたを考えています。
物理的にピアノの左手の音数を減らしてしまいましたので
読み手にとっては不安で孤独な伴奏が
読み進むにつれてさらにゆっくりになり孤独感が高まります。
うん、いいではないか…
あとは本人が自分の殻を壊してジャンプするだけなのですが、
あらっ….こらっ….
地曵はリハのときよりもさらに破綻した部分が大きく
一瞬我を忘れ、客観性を失いました。
私は思わず楽屋に駆け込み、クソ地曵!と、小声でののしりました。
がっ、まあ、いいんです、これで。
破綻はしたけど、ジャンプは見せてくれました。
階段は確かに登っています。
エンディングです。
最後の挨拶は川野康之さんにお願いしました。
最初と最後に登場するのっていいなと勝手に思ったわけです。
川野さんは「僕、そういうの苦手ですが…」と前置きのあとで
「やってみましょうか」と引き受けてくださいました。
ライブが近づくとQシート送ったり名前リスト送ったり
さぞうるさかったことでしょう。
川野さん、ごめんなさい。そしてありがとうございます。
本当に実感のこもった素晴らしい挨拶でした。
そしてそして、打ち合わせでは
ピアノにのってゆっくり出てくださいと言ってたくせに
なにしろ押しているもんで、「もう出て」「いま出て」と
せかしてしまってすみません。
キャスト&スタッフ紹介では
ヒカシューの坂出雅海さんも舞台に呼び出しまして…
後ほど坂出さんは
「ボク、ギャラもらわずに舞台に出たのはじめて〜」と仰っていましたが
ギャラを払うどころか、チケット代をふんだくっております。
坂出さん、ご来場ありがとうございました。
それにしても事務局は忙しいものですね。
これでも慣れてきたので無駄な動きは減っているし
予想できることは対策を考えてはあるのですが
やはり不測の事態はどこにでもころがっているものだと痛感します。
それでも、いま写真を見ていると
これだけ撮ることができたのは
事務局大川くんという相棒がいてくれたおかげだと思います。
大川くんが負担してくれた分の余裕が写真の枚数にあらわれています。
つづく
<このレポートの出演者>
水下きよし:http://blog.livedoor.jp/mimizunwind/
高田聖子:http://ameblo.jp/shoko-takada-blog/
坂東工:http://blog.livedoor.jp/bandomusha/
村木仁:
http://blog.livedoor.jp/onigiri2011/archives/cat_10028705.html
地曵豪:http://www.gojibiki.jp/
仁科貴:http://www.facebook.com/takashi247
川野康之:http://www.01-radio.com/archives/14683
金井理明:http://www.hotchkiss.co.jp/
庄司輝秋:http://www.rooftop.co.jp/
坂出雅海:http://hikashu.exblog.jp/
森田仁人
大川泰樹:http://yasuki.seesaa.net/
そして執筆者・中山佐知子:http://nknk.exblog.jp/