2022年06月11日
川野康之
雨のある風景 『言の葉の庭』
雨の日に会いたい人がいる。
6月のある日、雨の降る公園で
少年は年上の女の人と出会った。
東屋で二人は雨宿りをした。
別の雨の日、また同じ公園で出会った。
また会うかもね、雨が降ったら。
と女の人は言った。
雨が降ると二人はいつもそこで会った。
少年は雨の日を祈るようになった。
雨の日だから見える風景がある。
信号の色を映す水たまり。
緑色に光る公園。
濡れて重そうな葉っぱ。
無数の雨粒。
水面に広がる波紋。
新海誠監督『言の葉の庭』に出てくる
雨の風景はことさらに美しい。
この世界には、雨の日にだけ見せてくれる美しさがある。
そして空模様は人の気持ちとつながっている。
映画はそのことを教えてくれる。
雨の日には誰かに会いたくなる。
今日6月11日は暦の上で「入梅」。
明日雨が降ったら、傘を持って歩いてみませんか。
素敵な出会いがあるかもしれません。
足を止めて空を見上げる私たちに、
雨は空の匂いを連れてきてくれる。
雨の日は誰かに会いたくなる。