2022年06月18日
佐藤理人
江戸のごちそう 7『寿司』
蕎麦、天ぷらに並ぶ「江戸の三味」、寿司。
シャリの上にネタを乗せる握り寿司が生まれたのは、
19世紀前半のこと。考案者は華屋与兵衛だ。
新鮮な魚介に酢飯を合わせた和のファストフード。
そのシンプルでスピーディな美味しさは、
せっかちな江戸っ子に大人気となった。
値段は1カン200円前後。
今とあまり変わらないが、大きさは2、3倍あり、
大きすぎるので2つに切って出すようになった。
一皿に2カンずつ乗っているのは、これが起源である。
当時人気のネタは海老とコハダ。魚介ではないが、
高級品だった卵がいちばん値段が高かった。
一方、マグロは不人気だった。
冷蔵技術がなく傷みやすいこと、脂身が多く、
江戸っ子の口に合わなかったことがその理由。
特にトロは、価値のない部分を意味する
「アラ」と呼ばれ、ただ同然で扱われていた。
江戸の前の海で捕れた魚介を使うことから、
「江戸前」と呼ばれた寿司は、関東大震災で
多くの寿司職人が故郷に帰ったことをきっかけに、
全国へ広がっていった。