2022年08月07日
佐藤延夫
花の日「椿」
椿は、旅する花だ。
と言っても、自分で移動するのではない。
鳥や獣が運ぶわけでもない。
小さな島国、日本から
外国人の手によって、海を越えた。
18世紀、長崎の出島で医者として働いていたカール・ツンベルクは
植物標本と一緒に椿の苗木を持ち帰ったという。
ドイツの博物学者ケンペルや、オランダの植物学者シーボルトも
椿の美しさを母国に伝えている。
日本の植物など知られていなかったヨーロッパの庭園で、
椿だけが大ブームとなり、広まっていった。
フランスの小説家デュマ・フィスの作品「椿姫」。
椿がヨーロッパに渡らなかったら、
別の名前になっていたはずだ。
花の美しさは一瞬の美しさ。
その運命は、ときに人の手に委ねられる。
8月7日は、花の日。