2022年08月14日
新井奈生
象形文字 #3
その絵はあるとき意志を持ち、
漢字となって姿を残した。
今、ここにあるのは一枚の稲妻の絵。
ジグザグと屈折しながら天を切り裂くその姿は
やがて、「申(シン)」という漢字になった。
日本風に送り仮名をつければ、「申す」と読むそれである。
古代、中国に住む人は
神がその威光を示すために
地上に雷を降らせるものと考えていた。
そのため、雷から生まれたこの申(シン)という漢字も
元の意味は天の神を指している。
さて、時代が降るにつれ「申」の文字は意味が転じ、
「申す」の意味で使われるようになった。
そこで神の漢字には「しめすへん」をつけた。
「しめすへん」は
「神への捧げ物をおく台座」の絵から生まれている。
3000年の昔、絵が文字に変わる一瞬があった。