2022年08月21日熊埜御堂由香 旅のはなし プルーストの言葉旅に出ると、普段はどうということのない人との出会いがやけに鮮明に心に残る瞬間がある。「日本人の旅人」といえば、きっと名前が出てくる松尾芭蕉。「奥の細道」では最後にこんな句を残している。「蛤(はまぐり)のふたみにわかれ行(ゆ)く秋ぞ」親しくなった人たちとの別れをハマグリのふたと、身に例えて表現するこの句。松尾芭蕉は人と出会いたくて旅をしていたのだと、ふと思う。