2022年10月22日
澁江俊一
川の流れと文学 『人間の魂を流れる川』
行く川の流れに、人は何を重ねてきたか。
その流れに身を浸し沐浴するため
世界中からあらゆる宗教の壁を超えて
多くの巡礼者が訪れる、インドのガンジス川。
この川をモチーフにして描かれる
遠藤周作の小説「深い河」。
キリスト教と日本人。
遠藤が生涯追い求めたテーマの
最終章となる物語である。
ヨーロッパで誕生した
キリスト教が掲げる真理を
その教えから遠く離れた日本で
ひたむきに生きる
さまざまな男女の人生をつむぎながら、
どこまでも深く突き詰めてゆく
壮大なストーリー。
あらゆる宗教を超えた
人類普遍の救済とは何なのか?
キリスト教国でも広く読まれ
ノーベル文学賞候補にもなった作家が
答えを探し続けた、
どこまでも深い問いかけ。
その旅の先に辿りついたガンジス川は
今日も豊かな水をたたえて
たくさんの人々の生と死を
清め続けている。