Team MOMENT

2022年12月17日

執筆者中山佐知子

credit: Wellcome Collection

スターナビゲーション

GPSはおろか、羅針盤も六分儀もなかった時代、
太平洋の島に住む人々は
太陽と月と星をたよりに
カヌーに乗って数千キロの海を渡った。
この伝統的航海術をスターナビゲーションと呼ぶ。
それに必要な知識は、文字ではなく
「星の歌」と呼ばれる歌で伝えられている。

陸が見えない海の上で大切なのは
自分の位置と目的地の方角である。
18世紀のイギリスの探検家は
星の位置と風向きをたよりに船を進める
タヒチの人々の航海術に驚嘆し
「文明社会の専門家のような正確さ」と記録した。

18世紀にキャプテン・クックがタヒチで目撃したダブルカヌーは
全長30メートルのカヌーを2つ並べて繋いだもので、
車に例えるとトラックのようなものだった。
30人の人のほかに数十日の航海に必要な水と食料、
家畜まで積み込むことができた。
彼らはこのカヌーに荷物を積んで
数千キロ離れた島々へ移住していったと言われる。
たとえばタヒチから4000キロ離れたイースター島。

一方、シングルカヌーは乗用車のようなもので
島の人々は漁をしたり
近くの島へ物々交換に行くのに使った。
数百キロ離れた島へ親戚に会いに行くのもこのカヌーだった。

スターナビゲーションで太平洋を航海する星の航海士たちは
人々から尊敬を受けていた。
しかし、20世紀になるとカヌーも航海術も消えてしまった。

それが復活したのは1970年代になってからだった。
ポリネシア人のルーツを証明するために
太平洋を渡るカヌーが復元され、
同時に伝統航海術も復活させることができた。

いまスターナビゲーションを学ぶ人たちは
プラネタリウムで星の動きを覚えるのだと聞く。

星を忘れそうになったら、天文台へ行こう。

執筆 中山佐知子

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