2023年02月18日
川野康之
カウリスマキ映画のたのしみ 「愛しのタチアナ」
アキ・カウリスマキ監督の映画を見るたのしみ。
一緒に旅をすること。
『愛しのタチアナ』はロードムービー。
舞台は60年代のフィンランド。
退屈な田舎町を抜け出して
中年男が二人、目的もなくドライブに出た。
「ラップランドへ?」
「あそこは最悪だ。
何しろトナカイしかいないんだ」
南に向かう。
途中出会ったロシア人とエストニア人の女性二人を
港まで送ることになる。
女性の前では無口になる男たち。
会話することもなく、ただひたすら旅を続ける。
見ていてもどかしいが、
そのうち不思議なことに彼らの心が通じ始める。
港に到着。
不器用に別れを交わした後に、
残った男たちがつぶやく。
「外国へ行ったことがあるか」
男たちも船に乗り込み、エストニアのタリンまで送っていく。
エストニアに着いて、
旅は意外な展開をたどる。
「俺は彼女とここに残る。作家になる。」
マッティ・ペロンパーが放ったこの驚きのセリフ。
ここまで一緒に旅をしてきた私たちへの
カウリスマキ監督からのプレゼントのような気がするのだ。