Team MOMENT

2023年04月23日

執筆者新井奈生

音楽の話 #3

音楽の授業で見る五線譜の成り立ちは、
意外にも一人の男の思いつきからであった。
彼の名は教皇グレゴリウス一世。
西暦590年に即位した、カトリックの最高指導者である。

当時ヨーロッパ各地の教会では
それぞれ独自の音楽で神を讃えていたようであるが、
グレゴリウスはそれを拒否し、
聖歌をすべて統一することを望んだ。
しかし、音楽のほとんどを口伝に頼っていた時代、
その実現にはおそろしく負担がかかった。

ある旋律を他の土地に伝えるためには、
歌える人間が行くしかないが、
その間一切の生活を捨てて旅することになる。
やはり苦労したのであろう、
信徒たちはその後300年もの時間をかけて旋律を記号化するようになり、
五線譜のルーツが誕生する。
それは一人の思いつきが、歴史の流れを変えた瞬間であった。

執筆 新井奈生

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