2023年05月13日
川野康之
屋上はパラダイス 「銀座のミツバチ」
銀座のど真ん中の11階建てのビルの屋上に養蜂所がある。
17年前の春、銀座の会社や店で働く人の有志が始めた。
最初は周囲から怪訝な顔をされた。
銀座でミツバチを飼うなんて危険じゃないかという意見もあった。
銀座は常に新しいものを受け入れてつくられてきた街だ、
そう言って応援してくれた人もいた。
銀座から半径2キロ圏内には皇居・浜離宮・日比谷公園。
街には街路樹がたくさんあった。
ミツバチたちはそこから蜜を集めてきた。
ミツバチのためにもっと蜜源を確保しようと屋上緑化が始まり、
イモ、ハッカ、ハーブ、カボス、キンカンなどの野菜や果物畑が
ビルの上に広がっていった。
今では50万匹ものミツバチが銀座を飛ぶようになった。
思いがけないことがあった。
銀座にツバメが帰ってきた。
それはうれしいことだけど、
ミツバチを育ててきた人たちの心の中は複雑だった。
ツバメはミツバチを食べる。
だがある日、ミツバチの捕まる瞬間を超高速カメラで撮影した映像を見て、考えが変わった。
ミツバチは突然方向転換したり、速度を落としたりして逃げる。
追うツバメも必死で、かなりの熟達者ツバメでないと捕獲できない。
「これぞ自然の食物連鎖だ。
ツバメもミツバチも銀座でけなげに生きているんだ。」
この春、銀座に人が帰ってきた。
3年ぶりの銀座で
ミツバチとツバメが迎えるだろう。
人間も自然の一部なのだ。
銀座に行ったら空を見上げてみよう。