2023年07月23日
石橋涼子
手紙のはなし 「紫式部の文通」
『源氏物語』で有名な紫式部。
彼女は結婚してわずか数年で夫に先立たれた。
幼い娘とふたり、悲しみと生活の苦労の中、
彼女を励ましたのは物語の存在だったという。
当時は漢文や和歌こそが学問であり、
物語は女子供が楽しむものと見られていた。
それでも紫式部は
物語好きの仲間と文通をつづけ、
互いに意見をかわすことが
心の救いであり、喜びだった。
近づきにくい人にも、物語のためなら
つてを辿って手紙を送ったという。
彼女はやがて、好きが高じて物語を紡ぎ始める。
『源氏物語』の始まりである。
これが貴族の間で評判になり
時の権力者である藤原道長の目にも止まり、
皇后の元で働くきっかけとなる。
1000年前の、好きを語り合うための文通。
現代のSNSに通じる部分があるのが、おもしろい。