Team MOMENT

2024年03月02日

執筆者小林慎一

Photo by Elliott Blair on Unsplash

狂気と正気の間に#5

統計によると100人に1人がサイコパスで

企業のCEOになると4人に増える。



犯罪心理学者のロバート・ヘアによると

それは資本主義の結果だと言う。



口が達者で、人を操り、非道な決断をしなければいけない。

このことは現代に生きる私たちすべてに関係がある。



精神障害を取材しているジャーナリストのジョン・ロンソンは、

アル・ダンラップにアポイントを取った。



ダンラップは、弱体化した企業に参入し、多くの従業員を解雇し、

アメリカのいたるところをゴーストタウンにした人物だ。



ダンラップの庭には様々な肉食動物の彫刻がにあった。

そして、彼は、巨大な肖像画の前でインタビューに答えた。



「あなたは過剰な自尊心を持っていますね」

「自分は信頼するものだよ」



「あなたは人を操りますね」

「それがリーダーシップだ」



ジョンはインタビューをしながら、

ダンラップのサイコパスな部分を探していることに気づいた。

彼は、青少年は非行をしてはいけないと語った。

彼は、一度離婚をしていて、

妻をナイフで脅し、人の肉の味を知りたいと言ったという。

しかし、2度目の結婚は40年以上つづいている。



取材を終えると、

重犯罪者精神病院に収監されているトニーから電話がかかってきた。



「俺は、後悔の欠如がサイコパスの証拠だと言われ、
後悔を口にすると、人をだまそうとしていると言われる。

何をいってもサイコパスの診断をされるんだ」



そして、こう付け加えた。「もうすぐ、俺の審査があるんだ。来るかい?」



ジョンが審査に立ち会ったその日に、トニーはついに釈放された。
 
依然スコアは高いが、無期限に収監すべきでないというのが理由だった。



廊下でトニーに会うとジョンはこれからどうするのか尋ねた。



「好きな女がベルギーにいるんだ。だけど彼女は結婚しているから、

まずは旦那と別れさせなきゃいけない」



ジョンは、取材をまとめた本の中でこう述べている。
トニーもダンラップも半分はサイコパスだ。私もそうかもしれない。

社会は曖昧さを嫌うが、サイコパスかどうかの、そのグレーゾーンが、

人を複雑にし、それが人間性をつくるのではないだろうか。



釈放されて2年後、トニーがジョンに電話をしてきた。

バーで喧嘩をして1ヶ月だけ刑務所に入ったという。

トニーはこう言った。

「お礼をしたいんだ。飲みに、いかないか?」

ジョンは、その申し出を断った。

執筆 小林慎一

* 全て必須項目です

CAPTCHA


戻る