2022年06月11日川野康之 Photo by Nur Andi Ravsanjani Gusma雨のある風景 『東京八景』忘れられない雨の風景がある。津軽から出てきた青年が東京で最初に住むことになったのは戸塚の下宿だった。東京で暮らした10年間を青年は後に『東京八景』という小説に書いた。最初の風景は「戸塚の梅雨」となっている。太宰治『東京八景』の中に雨についての描写はない。下宿の部屋から見た雨の記憶は作家の中だけにある。