Team MOMENT

2022年06月25日

執筆者波多野三代

〜作家のLoveletter〜 シェイクスピア

ルネサンス期を代表する劇作家、シェイクスピア。
彼の作品の一つ「ソネット集」と言われる詩集は
Loveletterだったのではないか、と言われている。

この本には謎めいた言葉がある。
「このソネット集の唯一の産みの親であるW. H.氏に捧ぐ」
この人物が誰かは、いまだにわかっていないが
詩に繰り返し登場する「美少年」が、
この本を捧げられたW.H氏ではないかと言われている。

全154番ある詩のうち、18番から126番が、
この「美少年」への愛をうたっているからだ。

中でも最も有名なソネット18を戸所宏之の訳で読んでみる。

「君を夏の日に喩えようか。
いや、君はずっと美しく、穏やかだ。」

この詩は愛する人を輝かしい季節になぞらえ
その短さを、人のうつろいに重ねてゆく。
そして、こんな願いにも似た言葉で終わる。

「でも、君の永遠の夏を色あせたりはさせない、
もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ、
まして死神に君がその影の中で彷徨っているなんて
自慢話をさせてたまるか。
永遠の詩の中で君は時そのものへと熟しているのだから。
ひとが息をし、目がものを見るかぎり、
この詩は生き、君にいのちを与えつづける。」

シェイクスピアは眩しいほどの憧れをもって、
そのひとを言葉の中に永遠に刻もうとした。

ちなみに、愛を伝える手紙に「Loveletter」という名前をつけた人物は
他でもないシェイクスピアだと言われている。

〜作家のLoveletter〜

執筆 波多野三代

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