2022年08月14日
新井奈生
象形文字 #2
その絵はあるとき意志を持ち、
漢字となって姿を残した。
「支流を巻き込みながら流れる、長い長い川」を描いたその絵は、
やがて「永遠」の「永」という漢字になった。
これは、距離としての「長い」が
時間としての「永い」に意味が広がったことを示している。
漢字を生み出した古代文明は黄河の流域で栄えた。
黄河は河口付近ともなるとその川幅は18kmにも及ぶ。
向こう岸が見えず、
向こう岸があるかどうかもわからないまま
いつまでも続く水の流れだけがあったのだろう。
3000年の昔、絵が文字に変わる一瞬があった。