2022年08月14日
新井奈生
象形文字 #6
その絵はあるとき意志を持ち、
漢字となって姿を残した。
今、ここにあるのは2枚の絵。
猛々しい虎の絵と、身をくねらせる竜の絵である。
それらは「虎」の漢字と「竜」の漢字に姿を変えた。
この成り立ちを聞くと、ふと疑問が浮かんでくる。
虎を目にした人間が、それを描いて、文字ができた、というのはわかる。
しかしその理屈だと、竜を見た人間がいた、ということにならないか。
実際にはワニや蛇だとする主張もあるが、
ここではあえて、古代中国の空には竜が飛んでいたのだ、という考えに
心を遊ばせておくことにしたい。
3000年の昔、絵が文字に変わる一瞬があった。