2022年09月24日
佐藤理人
グレート・フィッツジェラルド ハリウッド
ヒーローを見せてごらん。僕が悲劇を書いてあげよう。
アメリカ文学を代表する作家、
F・スコット・フィッツジェラルドの人生は、
自分が書いたこの言葉を地でいくものだった。
1920年代、彼は第一次大戦後の好景気に沸く、
新しいアメリカを描いた一連の作品で流行作家となった。
妻のゼルダもまた、自由で奔放な新世代の女性、
「フラッパー」の代表で、2人は毎晩派手なパーティを繰り広げた。
1925年、傑作「グレート・ギャツビー」を発表すると、
フィッツジェラルドの名声は絶頂を迎える。
しかし1929年、世界恐慌で世の中は一変。
享楽的な世界を描く彼の作品は、一夜にして時代遅れになってしまう。
さらにゼルダが深刻な心の病に罹り、入院する。
治療費と浪費で莫大な借金を抱えた彼は、
生活費を稼ぐため、ハリウッドで脚本家に転身した。
返済に追われ、アルコールに逃げるその姿に、
かつての人気作家の面影はもう見られなかった。
カッコよく生きなくてもいい、生きていくことに意義がある。
そう言って執筆活動を続けた彼は、
最後の長編「ラスト・タイクーン」を執筆中、
心臓発作に倒れ、44才でこの世を去った。
わずかな参列者に見送られた寂しい葬儀は、
彼が小説で描いたギャツビーの葬儀とそっくりだった。
今日はフィッツジェラルドの誕生日。