2023年03月18日
波多野三代
〜春分の日〜 春の皿には苦みを盛れ
「春の皿には苦みを盛れ」
日本に古くから伝わる「食養生」の考え方だ。
こんな話を耳にしたことはないだろうか。
春、目覚めた熊が初めに食べるものは
苦みのある”蕗のとう”。
旬の食材を食べることは
生き物の本能に刷り込まれた知恵だ。
人も、動物も
厳しい寒さに耐えるため、冬は代謝が落ち、じっと栄養を蓄える。
春、暖かくなってくると代謝が活発になり、
冬に備えて溜め込んだ油や老廃物を外に出す必要が出てくる。
その「排出」を助けるのが、
苦みのある植物性アルカロイド。
ほろ苦い春の味覚の正体だ。
うど、こごみ、タラの芽、菜の花、蕨、ぜんまい、つくし、そして蕗のとう。
春分を境に一斉に旬を迎える野の命は
一様に苦みを帯びている。
春分の日がやってくる。
冬を体から追い出し
ほろ苦くも暖かい、春の伊吹を取り込もう。