2023年11月25日
川野康之
函館の石川啄木 『陸奥丸』
午前3時に青森港を出た陸奥丸(むつまる)は
津軽海峡を進むにつれ大きく揺れた。
明治40年5月5日、
石川啄木は新天地北海道へ向かっていた。
代用教員をしていた岩手県渋民村の小学校で
ストライキを扇動したため免職となり、
追われるように村を出たのだ。
一家は離れ離れになった。
妻子、母、妹を親戚や知人のもとへ預け、
自分は函館にある文学同好会を頼るつもりだ。
石川啄木、21歳。
新しい運命を北海道で開拓しようと思っていた。
石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし (石川啄木)