2023年07月01日
佐藤延夫
富士山 「オールコックとフジヤマ」
初めて富士山に登った西洋人。
それは、初代駐日英国公使、ラザフォード・オールコック。
今から150年以上前、1860年9月のことだ。
外交官は日本国内どこでも旅行できる権利がある、という
日英修好通商条約にもとづき、
富士登山に挑戦している。
当時は桜田門外の変や
浪士による外国人殺傷事件が相次いだため、
幕府は登山をやめるよう必死に引き留めたという。
オールコックは幕府を説き伏せたものの
旅は当初の希望とは逆の大所帯になった。
インド海軍の大尉、武装した公使館の職員、植物学者、
科学観察要員。そして犬一匹。
幕府側も、役人や目付のほか通訳、
荷物を運ぶ荷役、馬は30頭にも及んだ。
藤沢を過ぎて酒匂川を渡り、小田原へ。
道中では、熱く蒸したさつまいも、魚のフライ、
ブドウや季節の果物にも舌鼓を打った。
とりわけ薄く切ったスイカはお気に召したようだった。
さらに箱根から三島に移動し、
沼津を越えて吉原宿に到着すると台風がやってきた。
ようやく登山を始められたのは、その数日後。
4時間ほど登って、当時の六合目で宿泊。
次の日も4時間ほど登り続け、頂上に辿り着いた。
山頂ではイギリス国旗を掲げ、シャンパンで乾杯したそうだ。
富士山に登ったのは合計8時間。
帰りは3時間足らずで下山したと記録には残されている。
富士山の山梨側、吉田口のルートは、
今日7月1日が山開き。
オールコックの記念碑がある富士宮ルートは
もうちょっと先なのでご注意を。