2024年01月20日
森由里佳
クラシック音楽 「クラシック音楽を芸術にした男」
クラシック音楽を、芸術にした男の話をしよう。
中世の音楽家の仕事といえば、
貴族や教会の権力者たちを満足させる音楽を創ることだった。
創った曲はその場限りのBGMとして消費され、
芸術作品として後世に残すという意識はほとんどなかった。
あのモーツアルトすら、「芸術」という言葉を使っていなかったという。
クラシック音楽は貴族と教会だけのものであり、
音楽家は、専門技能で貴族に仕える使用人。
そんな世界を変えたのが、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
若い頃こそ貴族に仕えたものの、大成してからは自立。
一般市民も鑑賞できるコンサートや楽譜の出版を通じて、自ら収入を生み出した。
市民にひらかれた新しい音楽を創ったと同時に、
権力の後ろ盾がなくても成功できる職業であることを証明したのだ。
モーツアルトやハイドンが、貴族のパーティのたびに短時間で新作を仕上げたのに対し、
誰にも属さないベートーヴェンは、時間をかけて創りたい音楽や新しい作風を追求した。
ひらかれた、しかも新しい音楽に市民は熱狂。
クラシック音楽は、貴族の消耗品から、人々から長く愛される芸術品になった。
ベートーヴェンはこんな言葉を遺している。
多くの人々に幸せや喜びを与えること以上に、崇高で素晴らしいものはない。