2023年09月16日
小林慎一
水平線をつかめ ♯5
ダイアナは、
キーウエストの海岸を目指して泳ぎ続けていた。
彼女は、成し遂げられると信じていた。
しかし、海に入って2時間。全身に焼けるような痛みが走った。
「ファイヤ!ファイヤ!」彼女は叫んだ。
麻痺が起こり、呼吸ができなくなった。
そして、痙攣が始まった。
猛毒を持つハコクラゲに刺されたのだ。
救命士が海に飛び込んだが、
彼も刺され、ボートに引き上げられた。
29歳 。180cm。 120kg。
鍛え抜かれた青年は
「息ができない。死んでしまう。ダイアナを助けられない」と泣いた。
時間は、夜8時。マイアミから医療チームが到着したのは朝の5時。
彼女はそれまで泳ぎ続けた。