2024年03月23日
新井奈生
宇宙#5
2010年6月13日。
日本の宇宙探査機「はやぶさ」から分離したカプセルは、
オーストラリアの南部、ウーメラに着陸した。
はるかな宇宙からたどり着いた奇跡の小包・・・。
そのロマンの前では全てが許される・・・ような気がしてくるが、
そう上手くはいかないのが現実である。
この、「宇宙からの荷物」でさえ避けては通れない関門。
そう、「検疫」である。
検疫とは、
ある国から他の国へ荷物を運び入れる場合、
そこに付着したウイルスや菌、生物、
その他あらゆる危険をチェックすることである。
が、なにしろ相手は「宇宙からの荷物」。
検疫には苦労がともなった。
そもそも、カプセルの中身は
小惑星のかけらをはじめとする貴重な研究サンプルである。
当然、壊れやすさも未知数。
万が一にも破損させたら・・・国際問題になりかねない。
検疫チームはまずカプセルの落ちた一帯を封鎖し、
中身に破損がないかを確認した。
だが、さすがにそれ以上のチェックはできない。
次なる問題は「検疫所への移動」であった。
破損のリスクを最小限に抑えるため、
カプセルは検疫場まで、特殊なヘリコプターで運ぶこととなった。
しかしこのカプセルが落ちたウーメラ一帯には、
なんとアボリジニの聖地が含まれていたため、
ヘリコプターの着陸許可には相当な時間がかかったようだ。
検疫など、本来ならさっさと済ませたい話なのだが
宇宙からの飛来物・・・となると、
とんでもないスケールに手間が膨れ上がるのである。
検疫。それはこれから来る宇宙時代に、
人類に大混乱を引き起こすテーマ・・・かもしれない。