2023年06月18日
若杉茜
日本語のはなし 「夏の雨」
6月、梅雨。
変化もなく降り続く夏の始まりの雨を、
昔の日本では今よりずっと、多様な姿で捉えていたようだ。
日本語の雨にまつわる表現は、百以上あるという。
この時期の雨も、たくさんの細やかな姿が言葉に残っている。
たとえば梅雨の別称は、
栗の花が落ちる時期と梅雨が重なることから、墜栗花雨(ついりあめ)。
草木を潤す恵みの雨、甘雨(かんう)。
青々とした草木に降る雨、翠雨(すいう)。
明るい空から降る夕立、白雨(はくう)。
涼しさを運ぶ雨、涼雨(りょうう)。
卯の花を腐らせるくらいに降り続く、卯の花腐し(うのはなくたし)。
七夕の日に降る、織姫と彦星の別れの涙かのような、洒涙雨(さいるいう)。
雨が続いたら、その名前を考えてみる。
今年はそんな梅雨の過ごし方も、悪くないかもしれない。