2022年10月30日

執筆者小林慎一

Photo by Faris Algosaibi

パワーポーズ ♯6

エイミー・カディは、
19歳の時に、交通事故にあい、
頭部外傷リハビリ病棟で目を覚ました。

IQが大きく下がった。
頭の良さがアイデンティだった彼女は強いショックを受けた。

4年多くかけ大学を卒業し、プリンストン大学の大学院へ行った。

そこには、20分スピーチというものがあり、
彼女はスピーチによって自分がIQの低い偽者だとバレることを恐れた。
「自分はここにいるべきではない」と常に感じていた。
教授のスーザンに「辞めます」と伝えた。

すると、スーザンは言った。
「あなたはここにいるべきよ!
できているフリをしなさい。
どんなに怖くても、本物になるまで続けなさい」

2022年10月30日

執筆者小林慎一

Photo by Ars Electronica

パワーポーズ ♯7

身体が心に影響し、心が行動に影響し、行動が結果に影響する。

エイミー・カディはそう主張する。

彼女の持つハーバードの授業で、
発言しない生徒がいた。
このままでは落第すると伝えると、その生徒は、
「私はここにいるべき人間じゃない」と言った。

エイミーは、彼女にこう伝えた。
「あなたはここにいるべきよ。
 明日からは力に溢れているフリをしなさい。」

次の日、その生徒が発表した意見は素晴らしいものだった。
教室の誰もが驚いた。
「あんな子、いたっけ?」と。

2022年10月30日

執筆者小林慎一

Photo by Erik (HASH) Hersman

パワーポーズ ♯8

社会科学者エイミー・カディはこう言う。

フリをしてやり過ごすのではなく、
フリを本物にしてください。
それが本当に自分のものになるまでやるのです。

評価される場面にのぞむ前に、
胸を張ってください。
パワーを感じられるポーズを取ってください。

人生の結果を大きく変えることになるはずだから。

2022年10月29日

執筆者川野康之

懐かしい友ロバート・バーンズ 農夫の息子

ロバート・バーンズは、
懐かしい友である。

貧しい農夫の息子として生まれ、
農夫として生きた。
スコットランド方言を使って詩を書いた。
たくさんの恋をし、
14人も子供をつくった。
酒を愛し、歌と音楽を愛した。

その生涯は短く、貧乏との闘いだったが
生きる楽しみを謳歌した。
バーンズを愛する者は彼を友と呼ぶ。

2022年10月29日

執筆者川野康之

Photo by Brian Boucheron

懐かしい友ロバート・バーンズ 鼠に寄す

畑で鋤や鍬をふるいつつ、
ロバート・バーンズは詩を書いた。
自然や命をみずみずしい感性で歌った。

『To a Mouse』(鼠に寄す)
という詩がある。
土から掘り出された鼠の驚きと悲嘆が
詩になっている。

人間も鼠も異なるところはない、
同じ命だとバーンズは言っている。

2022年10月29日

執筆者川野康之

Photo by Kārlis Dambrāns

懐かしい友ロバート・バーンズ 麦畑のバーンズ

ロバート・バーンズが詩を書いたスコットランド民謡
『Comin Through The Rye』は、
日本に伝わって『故郷の空』という唱歌になった。

郷愁を誘うメロディが秋の夕暮れにぴったりだが、
この歌、
後にザ・ドリフターズが違う歌詞で歌った。
「誰かさんと誰かさんが麦畑・・・」
じつはこっちの歌詞の方が元のバーンズの詩に近い。
バーンズも麦畑でデートしていたのだろうか。

2022年10月29日

執筆者川野康之

Photo by byronv2

懐かしい友ロバート・バーンズ 過ぎ去った昔

スコットランドを旅すると
一度は耳にするロバート・バーンズの歌がある。

『Auld Lang Syne』。
友と過ぎ去った昔を思い出して
一杯飲もうという歌である。

もしも立ち寄ったPUBで
この歌が始まったら
日本人なら一緒に歌うことができる。

『蛍の光』。
隣の人がきっとにっこり微笑んでくれるだろう。
懐かしい友と出会ったように。

2022年10月29日

執筆者川野康之

Photo by Drew Leavy

懐かしい友ロバート・バーンズ 誕生日のハギス

1月25日のロバート・バーンズの誕生日には
スコットランド中でお祝いをする。

その夜はみんなでハギスを食べる決まりになっている。
羊の内臓を挽肉にし、オーツ麦などと混ぜたのを
羊の胃袋に詰めて茹でたものだ。

食べる前にバーンズの「ハギスに捧げる詩」を朗読する。
けっこう長い。

終わるとハギスを切り分け、
シングルモルトウイスキーをたっぷりとふりかけて食べる。

最後にはもちろん『Auld Lang Syne』をみんなで歌うのだ。

2022年10月29日

執筆者川野康之

懐かしい友ロバート・バーンズ 我はバーンズを愛す

スコットランドから遠く離れた日本で
ロバート・バーンズに強く惹きつけられた男がいた。

昭和の初年、
大学を出たばかりの英語教師中村為治は、
教室でバーンズの詩を大声で朗読していた。
時には身体を上下にゆすって歌った。
生徒にも歌わせた。
とうとう自ら翻訳して
『バーンズ詩集』を出版する。

その序文の書き出しにはこう書いている。
「我はバーンズを愛す」

2022年10月29日

執筆者川野康之

Photo by TANAKA Juuyoh (田中十洋)

懐かしい友ロバート・バーンズ 乗鞍とスコットランド

『バーンズ詩集』を出版した後も
中村為治は教壇に立ち続けた。
45歳になった時、ぷつりと教師を辞めた。
東京を離れ、乗鞍の山奥に移り住んだ。

土地を開墾し、種蒔きから始めて自給自足の農業に没頭した。
厳しい山の自然の中で、土と格闘を続けた。
この地を「乗鞍独立王国」と名付けた。
王国の国花をスコットランドと同じアザミに制定したという。
生活は苦しかったが、為治は乗鞍を離れなかった。
バーンズと同じ貧しい農夫として残りの人生を生きた。

為治がかつて教室でよく歌っていたのは、
『My heart’s in the Highland』。
『バーンズ詩集』にも納められている。
もちろん為治の訳である。

 我が心はハイランドにあり、我が心は此処にあらず。
 我が心はハイランドにありて鹿を追う。

乗鞍に住みながら、
ハイランドの風景を重ねて見ていたのだろうか。

我はバーンズを愛す。
彼は偉大なる人物にてはあらざるべし。
 されど決して下劣なる男にてもあらず。

『バーンズ詩集』の序文にこう書いた中村為治は、
死ぬまでロバート・バーンズを心の友として生きた。