2022年09月11日

執筆者道山智之

Photo by hikaru starr

Moment for a Poet1 白秋と言葉

言葉の魔術師・北原白秋。
愛する人を見送る朝。
雪がやさしく、激しく、こころに舞い落ちる。

君か す朝の舗石しきいし さくさくと
雪よ林檎の のごとくふれ

情熱的な恋の場面では、
“かおり”でさえも“かたち”にかわる。

 

今年は、北原白秋没後80年。

〜Moment for a Poet〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Photo by Tomoyuki Michiyama

Moment for a Poet2 白秋と青春

明治40年。
22歳の北原白秋は4人の仲間と、
九州を歴訪する。

「五足の靴」と呼ばれる旅だ。

途中、彼らは三池炭鉱に立ち寄った。
エレベーターで地下深く降りたときの風景を
こんな言葉で書いている。

五人は地獄をめぐる。
ダンテの夢は実現されて眼の前にある…

「南蛮文学」と呼ばれる作品にこもる熱は、
リアルな体験から生まれた。

〜Moment for Poets〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Photo by Tomoyuki Michiyama

Moment for a Poet3 白秋と朔太郎

大正4年。
30歳の北原白秋は、初めて群馬県前橋市を訪れた。
出迎えたのは前橋を故郷とする詩人・萩原朔太郎。

朔太郎の家を訪れると、門には国旗が立っている。

白秋は聞いた。

「今日はなんの祭日かな?」

朔太郎が答える。

「あんたが来るから、出したのだ。」

見回すと、国旗を出しているのは朔太郎の家だけだった。

白秋はその気持ちを感じて、
目頭が熱くなったという。

わずか1歳年上の白秋を師と慕った朔太郎。
今年、偉大なる2人の詩人は、ともに没後80年を迎える。

〜Moment for Poets〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Photo by Tomoyuki Michiyama

Moment for a Poet4 白秋と海

人妻との恋の破綻、
実家の破産。

追い詰められた詩人・北原白秋は
死を想い海へ行く。

しかし三浦半島の太陽の明るさに、
思いとどまった。その頃の歌がある。

油壷しんととろりとして深し
しんととろりと底から光り

詩歌に打ち込むことで
彼は人生の扉をもう一度あけていった。

〜Moment for a Poet〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Moment for a Poet5 白秋と童心

詩人・北原白秋は言う。

眼で見、耳で聴くだけはまだしも、
たましいぜんたいでハツハッと感じる位でなければ、
歌や詩はできないものである。

心をオープンにして、
アンテナの感度を上げておく。

それはきっと、
幸せをとらえるための近道でもある。

〜Moment for a Poet〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Photo by Tomoyuki Michiyama

Moment for a Poet6 白秋と住まい

詩人・北原白秋。
彼は43歳から3年間、
世田谷区の若林に住んだ。

今、住まいの跡はマンションとビルにはさまれたわずかな土地。
名残り惜しむように緑が生い茂る。
目の前は交通量の多いアスファルトの車道。

つちふらし 嵐吹き立つ 春さきは
代々木野かけて あけの風空

当時まだのどかだった世田谷の、
かすむ春先の景色がよみがえる。

〜Moment for a Poet〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Photo by Jacques Beaulieu

Moment for a Poet7 白秋と舟

詩人・北原白秋。

大正時代に廃れゆく故郷の城下町・柳川を憂いた
白秋は、ちょうど100年前の大正11年、
地元新聞に「文化的田園都市」構想を寄稿。

「水路を遊楽用として利用」することを提案した。

今では、堀割での舟遊びで
有数の観光地となった柳川。

詩人を生んだ街は、
時をへて、
詩人の「作品」となった。

〜Moment for a Poet〜

2022年09月11日

執筆者道山智之

Moment for a Poet8 白秋と飛行機

故郷・柳川の実家が破産し、
長く戻ることをためらった北原白秋。
昭和16年、56歳でついに帰郷を果たす。

小学校では子どもたちが列をなして
視力を失った国民詩人を迎えた。
愛する故郷のぬくもりを、彼はたましいで感じた。

この世を去る、1年前のことだった。

今年は、北原白秋没後80年。

〜Moment for a Poet〜

2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Selena N. B. H.

ウクライナ料理 ボルシチの伝統

ボルシチは、実はウクライナの伝統的な料理。
肉のブイヨンをベースに、発酵させたキャベツとビーツで作る
真っ赤なスープ。

地方や家庭によって、入れる材料も、味も変わる。
ウクライナ人にとっては味噌汁のようなもの。

ウクライナから来たシェフが
ロンドンに新しいウクライナ料理の店を出すという話を聞いた。
看板料理は、もちろん「ボルシチ」。

でも、シェフ自身は、
故郷の母がつくるボルシチが好きだという。

家族みんなで食べる思い出の味。
それが、ウクライナ料理の伝統なのだ。

2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Franklin Hunting

ウクライナ料理 旅するボルシチ

ウクライナの伝統料理ボルシチは
ビーツという野菜の赤い色が美しいスープ。

その昔、ウクライナを訪れた人々は
自分の国でも真っ赤なスープを作りたいと考えた。
でも、ビーツがない・・・。
代わりになるのは、トマトか?

今、世界各地に、
トマト味の赤いスープ、「ボルシチ」がある。

料理は自由に国境をこえる。