2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Daniel Prokopishyn

ウクライナ料理の夢

ロンドンに
ウクライナ語で夢という意味の
「ムリヤ」というレストランが誕生する。

「世界の人にウクライナの新しい面を知らせたい」
「故郷に帰れない人達にエネルギーを届けたい」

そんな夢をかなえる場所へ。

ウクライナを離れて暮らすオーナーシェフは、
料理で人をつなぎたい、と夢見ている。

2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Alpha

ウクライナ料理 パン

ウクライナには
「パンは物事の要」
「パン抜きの食事は食事ではない。」
という格言があるくらい、
みんなパンをよく食べる。

ウクライナは、古くからの麦の産地。
パンは、ふるさとの味、大地の味。

愛知県のあるパン屋さんが、
日本に暮らすウクライナ人に向けて、ウクライナ伝統の黒パンを焼いた。
パンがないのは、
日本人にとってごはんがないのと同じだから。

2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Kagor

ウクライナ料理 そば

ウクライナの家庭料理に欠かせないカーシャは
穀物を水やスープ、牛乳で煮込んだ、いわばお粥。
なかでも人気なのが蕎麦の実ので
朝ごはんや、肉料理の付け合わせに、
頻繁に食卓にのぼる。

もっちりした食感のお粥、蕎麦の実のカーシャは、
日本の蕎麦とは、
見た目も、味も、食感も違うが、ルーツは同じ。

どんな豪華な料理より
ソバを食べるとなぜか落ち着く、
その気持ちも同じかもしれない。

2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Veronica

ウクライナ料理 ドラニキ

すりおろしたジャガイモで作る、パンケーキ。
ドラニキは、ウクライナの伝統料理。

ジャガイモは、16世紀に南米大陸からやってきた。
寒い土地でも育てやすく、
国中で食べられるようになった。

ドラニキはひまわり油で焼く。
ひまわりも同じく南米から来た植物だが
今では、ウクライナに広大なひまわり畑が広がっている。

小さなパンケーキ、ドラニキの中に、
広い広い世界が詰まっている。

2022年09月10日

執筆者長谷川智子

Photo by Marco Verch Professional Photographer

ウクライナ料理 ウクライナの熱

野菜や肉を、焼く、ゆでる、煮込む。
ウクライナ料理は
熱で、食材の風味を高める。
「熱の料理」、といわれることもある。

これは中世のウクライナ料理が
長い時間をかけて煮込まれていたことによるらしいが、
その伝統は今に受け継がれ
豊富な調味料の助けを借りて
さらに洗練されたものになっている。

この地獲れる麦や野菜、キノコ、豆やハーブ、
家畜の牛、豚、鶏肉、
野生の動物や、川魚、
なんでも火にかけて、スープ、お粥、シチューに。

そして、
アジアの蕎麦、
インドのなすや、きゅうり
南米のトマト、じゃがいも、とうもろこし。

古くからシルクロードの中継点だったウクライナには
ヨーロッパとアジアの食文化が集まってきたに違いない。
世界のうまいものもみんな、ひとつの鍋で熱して、
さらにおいしい料理に変えていく。
ウクライナの人の情熱が作った、ウクライナ料理。

世界を受け入れ、いっしょに未来をつくる。

その熱い思い、
おいしい料理とともに、今こそ世界へ広がってほしい。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by jamesjustin

かき氷と文芸 枕草子

キーンと冷えた氷に、甘いシロップ。
一杯のかき氷は、暑さを忘れさせる。

清少納言の随筆『枕草子』にも、
削った氷に甘い蜜をかけたもの、として登場する。
当時は氷の塊を洞窟から引っ張り出して小刀で削り、
ツル草を煮詰めた蜜をかけて作っていたという。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by K Λ X I I I

かき氷と文芸 六つの花

江戸時代に詠まれたという川柳のひとつ、
「六つの花 五つの花の 御献上」。

六つの花は雪の結晶から氷を意味し、
五つの花は
加賀藩主前田家の家紋だった。

氷が貴重だった当時、加賀藩は夏になると
氷室で保管していた氷を
江戸の将軍に献上していたのだ。

片道500km近い道のりを
たった4日で運んでも
溶け残る氷はほんのわずか。
ため息が出るほどの貴重品だった。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by Yamanaka Tamaki

かき氷と文芸 永訣の朝

かき氷にふと浮かぶ宮沢賢治の詩がある。
妹・トシとの別れを別れを描いた『永訣の朝』。
その中で賢治が死にゆく妹のために取ってきたみぞれは、
史上最も哀しみを帯びたかき氷のひとつと言えるだろう。

若くして死の床に伏せるトシは、
高熱に苦しみながらも彼に頼むのだ。
雨雪、すなわち、みぞれを取ってきてほしい。

賢治は外に飛び出して、妹が口にする
最期の食べ物になるであろうみぞれを
お椀に取りながら願う。
どうか私のすべての幸いと引き換えても、
このみぞれが天上の食べ物に変わり
妹やすべての人々に
聖なる糧をもたらしてほしい。
それが、賢治とトシが永遠に別れた朝だった。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by Toshihiro Gamo

かき氷と文芸 氷水

「氷水」というと一般的に、
氷を浮かべた冷たい水を意味する。

しかし、俳句の世界では少々異なる。
氷水とは夏の季語で、
かき氷を指すことが多いという。

明治時代を代表する俳人・歌人の一人である
正岡子規も、氷水を季語に
かき氷の俳句を残している。

富士の雪 見ながら食うや 夏氷

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by inunami

かき氷と文芸 金太郎

人気のかき氷、宇治金時。
「宇治」は抹茶を、
「金時」は小豆やあんこのことを指す。
宇治はお茶の産地だが、
金時は何に由来するのだろうか。

その答えは、童話の『金太郎』にあった。
金太郎が絵になるときは
赤い肌の少年として描かれる。
そこで
赤い小豆のことを金時と呼ぶようになったという。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。