2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by Benjyamin.jpg

かき氷と文芸 氷屋の旗

天才といわれた歌人・石川啄木に
『氷屋の旗(フラフ)』という随筆がある。

フラフとは旗のことで、
風のない炎天下、揺れもせずに垂れ下がる氷屋の旗に
焦りながらも何もしない自らを思い苦悩するのだ。

同じ年、ついに啄木は
氷を食べて暑さを和らげるのは自然に反逆している、と
ある新聞に書いた。

しかし、彼の日記にはかき氷を食べたことが
度々書かれているから不思議だ。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by amespiphoto

かき氷と文芸 

昭和の時代に活躍した
作家・円地文子(えんちふみこ)は、
その名も『氷』というエッセイで
かき氷を食べる喜びを記している。

ソーダ水やシロップに氷を入れて食べることに、
この上ない満足を感じていたのだそうだ。

当時、かき氷には
関東と関西で違いがあって
関東風は、文子のように
シロップに氷をのせたものだった。

今も東京下町の甘味処では、
昔ながらの関東風かき氷が並ぶ。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by Universalmuseum Joanneum

かき氷と文芸 Kakigori

昭和の時代に活躍した
作家・円地文子(えんちふみこ)は、
その名も『氷』というエッセイで
かき氷を食べる喜びを記している。

ソーダ水やシロップに氷を入れて食べることに、
この上ない満足を感じていたのだそうだ。

当時、かき氷には
関東と関西で違いがあって
関東風は、文子のように
シロップに氷をのせたものだった。

今も東京下町の甘味処では、
昔ながらの関東風かき氷が並ぶ。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

2022年09月03日

執筆者蛭田瑞穂

Photo by daisuke suzuki

海 イナムラクラシック

「伝説」と呼ばれるサーフィンの大会がある。
「イナムラサーフィンクラシック」。

鎌倉の稲村ヶ崎で1981年に始まった大会だが、
7月から10月の間、大波が立った時のみ開催する
という規定があるため、毎年開催されるわけではない。
むしろ、開催されないことのほうが多い。

40年の歴史の中で開かれたのはたったの4回。
最後の大会は9年前、2013年の9月。

伝説の大波をつかまえる。
その一瞬のために波を待ち続ける者がいる。

2022年09月03日

執筆者森由里佳

Photo by Robert Bye on Unsplash

海 海を守る

国際サーフィン連盟のアギーレ会長は、
東京五輪の記録映画で、こんな話をしている。

命は海から生まれる。
だから海を守らないといけないと思って、
サーフィンをオリンピック種目にしようと活動してきたんだ。

エネルギッシュな種目の裏にある、大きな願い。
この夏あなたが訪れた海は、どんな海でしたか。

2022年09月03日

執筆者蛭田瑞穂

Photo by Long_t31613f

海 あの夏、いちばん静かな海。

監督北野武の3作目の映画『あの夏、いちばん静かな海。』。
聴覚障害者同士の青年と少女のひと夏の恋を
サーフィンを通して描いた物語。

この作品で北野は初めて作曲家の久石譲に音楽を依頼した。
そして久石が制作したのがテーマ曲の「Silent Love」。

音楽を極力排した作中で、この曲が静かに流れる。

2022年09月03日

執筆者蛭田瑞穂

海 希望の轍

桑田佳祐の初監督映画『稲村ジェーン』。
その挿入曲「希望の轍」。

歌詞にある「エボシライン」という耳慣れない言葉。
湘南エリアの海岸線を走る国道134号線といわれる。

情熱の重さは夜の凪 さまよう 夏の日は陽炎
遠く 遠く 離れゆく エボシライン

海岸線を疾走する車。一瞬ごとに遠くなる烏帽子岩。
そして夏も遠くなる。

2022年09月03日

執筆者森由里佳

海 波を描く

ウクライナ出身の海洋画家、イヴァン・アイヴァゾフスキー。
描く波の美しさは、写真を超えると言われている。

例えば、代表作「第九の波」。
折れたマストにしがみつく遭難者たち。
目の前には大きな波がうねりつらなり、
強い風が波頭を吹き飛ばしている。
波の腹は透き通っていて、海本来の美しさが垣間見える。

緊張感のあるシーンが放つ、異様な美しさ。
大きな波が、荒々しく、それでいて艶やかに輝くその光景は
一瞬で、見る者を海へとさらっていく。

2022年09月03日

執筆者森由里佳

Photo by Taymaz Valley

海 なつやすみ

人気ゲーム、「ぼくのなつやすみ2」。
登場人物のサイモンというカメラマンが、こんなことを話している。

夕日が海に入っていくとき、ジュッ!っと音がするでしょ。
あの音が写真から聴こえてくるまでがんばろうと思ってる。

今にも落ちそうな線香花火のようなまっ赤な夕日が、
大きな水平線に落ちてゆく…

夏休みが終わると秋も近い。

2022年09月03日

執筆者佐藤日登美

Photo by Susanne Nilsson

海 ボトルメール

見知らぬ誰かがきっと見つけてくれると信じ、
海へ投げ込まれるボトルメール。
英語では”Message in a bottle”と呼ばれ、
その名の通り「瓶に入れられた手紙」のことである。
海や川へ流され、波間を漂いながら行き先のわからない旅へと出る。

あるボトルは、ギリシャの哲学者によって海へと放たれた。
それは紀元前310年のことで、世界最古のボトルメールと言われている。
海流の流れを研究するための実験だったが、
瓶自体はいまだに行方知らずだ。

あるボトルは、18世紀に日本の船乗りによって海へと放たれた。
彼と43人の乗組員たちは宝探しの航海へ出たが途中で船が難破、南大西洋の島に漂着した。
食料も水も果て、死ぬ間際の船乗りはココナッツの木の断片に旅の記録を書き、瓶に託した。
100年の時を経て、ボトルは彼の故郷の海に流れ着いた。

あるボトルは、第一次世界大戦中にイギリス兵によって海へと放たれた。
それは愛する妻への手紙が入ったジンジャエールの瓶だった。
兵士はその二日後に亡くなってしまうが、
85年後、彼の手紙はテムズ川の漁師が発見することとなる。
妻も亡くなった後だったが、存命だった娘へと届けられた。

ボトルの中身は一本一本異なるが、
送り主の一瞬の思いが込められていることに変わりはない。

この瞬間も、当てのない旅に出た瓶が海を渡っているのだろう。