とても赤い実 ショートケーキ
ショートケーキは100年前、大正時代の日本で生まれた。
発案者には2つの説がある。
1人は不二家の創業者、藤井林右衛門。
洋菓子の視察で渡米した彼はアメリカの伝統菓子、
「ストロベリーショートケイク」と出会った。
「ショート」とは「短い」ではなく「サクサク」。
苺とクリームを挟んだクッキー生地の歯応えを、
藤井は日本人好みの柔らかいスポンジに取り替えた。
もう1人はコロンバンの創業者、門倉國輝。
フランスでのパティシエ修行中、彼はあるケーキと出会った。
マリーアントワネットも愛した「ル・バガテル」は、
ビスケット生地に苺とバタークリームを重ねたこってり系。
門倉はそれをしっとりした生地とあっさりした生クリームで、
日本人好みに改良した。
それでもショートケーキが全国に広まるのは、
冷蔵庫が普及する1950年代まで待たねばならなかった。
70年代に入り、クリスマスケーキが流行すると、
ショートケーキは日本の国旗と同じ紅白の色を追い風に、
一気に国民的ケーキの座を獲得する。
苺の甘みと程よい酸味、軽やかな生クリーム、
ふんわりしたスポンジが織りなす絶妙なバランス。
ショートケーキは「和を以て尊しと成す」日本人らしい、
美味しいハーモニーだった。
ショートケーキは今年で100周年。