2024年01月20日

執筆者森由里佳

クラシック音楽 「クラシック音楽を芸術にした男」

クラシック音楽を、芸術にした男の話をしよう。
中世の音楽家の仕事といえば、
貴族や教会の権力者たちを満足させる音楽を創ることだった。
創った曲はその場限りのBGMとして消費され、
芸術作品として後世に残すという意識はほとんどなかった。
あのモーツアルトすら、「芸術」という言葉を使っていなかったという。
クラシック音楽は貴族と教会だけのものであり、
音楽家は、専門技能で貴族に仕える使用人。
そんな世界を変えたのが、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
若い頃こそ貴族に仕えたものの、大成してからは自立。
一般市民も鑑賞できるコンサートや楽譜の出版を通じて、自ら収入を生み出した。
市民にひらかれた新しい音楽を創ったと同時に、
権力の後ろ盾がなくても成功できる職業であることを証明したのだ。
モーツアルトやハイドンが、貴族のパーティのたびに短時間で新作を仕上げたのに対し、
誰にも属さないベートーヴェンは、時間をかけて創りたい音楽や新しい作風を追求した。
ひらかれた、しかも新しい音楽に市民は熱狂。
クラシック音楽は、貴族の消耗品から、人々から長く愛される芸術品になった。
ベートーヴェンはこんな言葉を遺している。

多くの人々に幸せや喜びを与えること以上に、崇高で素晴らしいものはない。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

休日にスープを「レストラン」

レストラン。
その語源は、フランス語の「restaurer」。
回復させる、という意味だ。
その名の通り、
18世紀に生まれた最初のレストランは
美食にまみれた富裕層をターゲットにしており、
体調を回復させるような軽めの料理を提供した。

肉や野菜を煮込んだブイヨンのスープなど
口当たりの柔らかなメニューが人気を博し、
レストランはパリでも話題の店になっていく。

どんな時代でも、温かいスープは、
人の心を鷲掴みにする。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

休日にスープを「キャベツのスープ」

スープと野菜は相性がいい。
とりわけキャベツは西ヨーロッパ原産で
古代ギリシア時代から薬用として重宝された。
イギリスの最も古い料理書には、
キャベツのポタージュのレシピが載っているそうだ。
現在でも、フランス・ベアルヌ地方の郷土料理ガルビュールや
ドイツのコールズッペなど、
キャベツをふんだんに使ったスープは多い。
東ヨーロッパのシチーは、
ザワークラウトの酸味が効いた
キャベツが主役のスープだ。

スープに浮かぶ柔らかなキャベツは、
世界を平和に包み込む。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

休日にスープを「エンドウマメ」

人類は、1万年以上前からエンドウマメを食べていたという。
新石器時代の遺跡やスイスの住居跡に、
エンドウマメを使った食事のあとが発見された。
そうは言っても、現在のように柔らかいものではなく、
デンプン質が硬く乾いた小さな豆だ。
中世になると乾燥させて保存し、
お粥やスープの材料にしたそうだ。
マザーグースにもこんな歌がある。

熱いエンドウマメのポリッジ
冷めたエンドウマメのポリッジ
鍋に入れたままで
9日経ったエンドウマメのポリッジ
熱いのが好きな人もいる
冷めたのが好きな人もいる
鍋に入ったままで
9日経ったのが好きな人もいる

ポリッジとは、
イギリスで愛されてきたお粥のような朝ごはん。
いわゆるオートミールのこと。

スウェーデンやフィンランドでは、
木曜の夕食でこのスープをいただく風習が残っているそうだ。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

Photo by J 3 SS

休日にスープを「トマトのスープ」

トマトのスープ。
今でこそ定番のメニューだが、
トマトがスープの材料になったのは、
それほど古い話ではない。
16世紀、ヨーロッパに持ち込まれたトマトは
毒リンゴとも呼ばれ、観賞用とされることが多かった。
本格的に食用として使われるのは
19世紀以降のこと。
その後、アメリカで開発されたトマトの缶詰や
缶入りのトマトスープが、ヨーロッパで人気になる。

イタリアの名物料理ミネストローネだって、
もともとはトマトなんて入っていなかったそうだ。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

休日にスープを「タルハナ」

トルコ中央部アナトリアには、
タルハナと呼ばれる伝統的な料理がある。

ヨーグルトで発酵させたパン生地を
小さな団子、あるいは板状にして乾燥させる。
これを水で戻し、何種類もの乾燥野菜を加え、
お粥のようにしていただくそうだ。
前もって野菜を練り合わせておく地域もあり、
アジアや中東にも広がっている。

タルハナは、インスタントスープの原型とも言われている。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

Photo by Jocelyn & Cathy .

休日にスープを「ポタージュ」

人類はこれまで、
さまざまな方法で食材を煮込んできた。
樹の皮や竹筒、甲殻類の殻。
やがて粘土を焼く技術から、
調理用の土鍋が誕生する。
ポタージュ。
その語源は、「鍋に入れられるもの」。
青銅器や鉄の鍋が発明され、調理法も進化していく。

ちなみに「sop」という言葉もあり、
意味は、汁をぬぐうために使われるパン。
そのため、パン入りのブイヨンが
「スープ」と呼ばれるようになった。

ポタージュとスープ。
美味しければ、どちらでも。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

休日にスープを「固形スープ」

スープを長期保存して、
どこへでも持ち運べるようにしたい。
固形スープが生まれたのは18世紀。
そのルーツには諸説あるが、
スープを煮詰めて固形にするという試みは、
全世界的に行われてきたことだろう。

肉を骨ごと煮込み、コラーゲンを抽出し
徹底的に水分を飛ばす。
型に流し込んで四角に切り、
布の上に置いて完全に乾かしたら
もう固形スープの完成だ。

当時、世界をめぐる探検家も、イギリス海軍も、
こぞって固形スープを大量に積んで
長い旅に出た。

2024年01月14日

執筆者佐藤延夫

Photo by anjuli_ayer

休日にスープを「マルガトーニ」

インドがイギリス領だった時代に
誕生したスープがある。
マルガトーニ。
コショウ水を意味する。
つまりは香辛料の効いたカレーのようなスープのこと。
当時、イギリス人に仕えていたインドの料理人が
コース料理の一品目として、
苦肉の策として考えたものらしい。

カレーのスープが、美味しくないわけがない。

2024年01月13日

執筆者大友美有紀

Photo by Toshihiro Gamo

東京の寺社めぐり「九品仏」

東京の難読駅名として知られる
「九品仏(くほんぶつ)」。
その由来は、九躰の阿弥陀佛を安置する
「九品山 唯在念佛院 浄眞寺
(くほんざん ゆいざいねんぶついん じょうしんじ)」。
からきている。

江戸時代初期に開山。
三つのお堂に、
それぞれ三躰の阿弥陀佛が納められていた。

阿弥陀佛は、2014年から一躰ずつ、
京都の国宝修理所で修繕されている。
全て終わるまでに二十年かける計画だ。
九品仏が揃う、その日を楽しみにしたい。