2022年06月26日

執筆者澁江俊一

Image by 경복 김 from Pixabay

土と生きる幸せ『土の味』

土は人間の先生だ。

スーパーに行けば
100円ちょっとで
すぐに買える野菜でも
自分でイチから育てると
お金じゃ買えない幸福を
いくらでもくれる。

土の感触の気持ちよさ。
太陽のありがたさ。雨のありがたさ。
都会では見るのも嫌だった虫たちだって
花粉を運んでくれる
大切な存在だということ。

長い月日を費やして
土から収穫した野菜を食べると
カタチは不格好でも、味が濃くて深い。
土の味は美味しい、ということも
土は僕たちに教えてくれるのだ。

2022年06月26日

執筆者澁江俊一

Photo by Yasunorihayashi

土と生きる幸せ『土がつくるものさし』

土のものさしで測るもの。

福井県にある年縞博物館。
年月の「年」に縞模様の「縞」で
ねんこうと読む。

年縞とは
湖の底に一年ごとに重なる堆積物の層。
福井県の水月湖(すいげつこ)には
7万年分もの
世界に類を見ない年縞がある。

この年縞が
土に埋もれた化石や遺跡を調べるため
世界中で使われる
「放射性炭素年代測定法」の精度を
飛躍的に高めた。

まさに、時代のものさし。
博物館でぜひ実物を見てみたい。

2022年06月26日

執筆者澁江俊一

Photo by Aya Okawa on Unsplash

土と生きる幸せ 『根っこワーク』

土の中で、植物はおしゃべりだ。

「豊かな森」という言葉を聞いて
思い浮かぶイメージは
どんなものだろう?

木々が生い茂り、
多種多様な生き物が生きる
緑あふれる世界だろうか?
しかしそれは森の一面にすぎない。

森の豊かさは、
実は暗い土の中にこそある。
木は土の中の根っこのまわりに
菌根菌と呼ばれる菌を養っている。
この菌が地中に張り巡らされ、
たとえば害虫の襲来を知らせるなど
木と木の間で情報を
伝えあっていると言われている。
まさに「根っこワーク」。

森の土の中に広がる
目に見えない豊かさについて
僕たちはまだ知らない。

2022年06月26日

執筆者澁江俊一

Photo by NASA Goddard Space Flight Center

土と生きる幸せ 『土を求めて宇宙へ』

土もまた、限りある資源。

宇宙にある惑星を地球のように
人類が住める環境に変えていく。
途方もないスケールの構想がある。
それがテラ・フォーミング。

テラは地球であり、その語源は土。
いわば宇宙空間に
土をつくりに行く構想だ。
しかし実現は、はるか先の話。

80億人近い人類だけでなく
様々な命を今日も養ってくれる土。
宇宙もいいけれど
今いる場所も大切だ、と
何も言わない土が言う。

2022年06月26日

執筆者田中真輝

Photo by Boaz Ng

土と生きる幸せ 『土の中の星』

土ボタル、という虫がいる。

ホタル、と呼ばれているが
実はヒカリキノコバエの幼虫。
真っ暗な洞窟の中で青い光を放ち、
釣り糸のように垂らした粘液に
小さな虫を誘い込み、捕食する。

無数の土ボタルが光を放つ様子は、
さながら地下のプラネタリウム。

天空との不思議な相似など知りもせず、
彼らは土の中で、
小さな命の火を燃やす。

2022年06月26日

執筆者田中真輝

Photo by Ishan @seefromthesky on Unsplash

土と生きる幸せ 『土に還るまで』

灰は灰に。塵は塵に。

すべてのものは、やがて土へと還る。
ただ、それまでにかかる時間は
モノによって全く異なる。

電車の切符は、約2週間。
タバコの吸い殻は、約2年。
人間の体は、おおよそ
数十年から100年ほどで土に還るという。

ペットボトルは、500年かかっても、
完全には土に還ることはないらしい。

滅するからこそ、新たな命へと転じるという
宇宙のことわりの外側で
不滅のプラスチックは何を思うのだろう。

2022年06月26日

執筆者田中真輝

Photo by BJP039

土と生きる幸せ 『土の山』

地下鉄を掘ったときに出る土は
どこにいくのだろう。

大阪市大正区にある「昭和山(しょうわざん)」は
地下鉄建設時の残土で人工的につくられた山。

その標高は33メートルと、
山というより丘といった風情だが、
その頂上からは大阪港を一望することができ、
人々の憩いの場となっている。

山頂を駆け回る子供たちに
この山、実は、地下鉄を掘ったときに出た
土でできてるんだよ、
といったら、どんな顔をするだろう。

2022年06月26日

執筆者田中真輝

Photo by Lisa

土と生きる幸せ 『土と戯れる』

両手で土をこねる。

ただそれだけのことで、
なぜか心がとても落ち着く。

ひんやりとした手触り。
弾力のある土を、ひねり、ちぎり、
またこねる。

土と戯れるとき、人は無心になる。
両手でこねているのが、自分のこころだから
かもしれない。

2022年06月25日

執筆者波多野三代

〜作家のLoveletter〜 夏目漱石

夏目漱石は気難しい。
ロンドン留学中に送った妻への手紙も、素直ではない。
日本に帰った楽しみを書けば、「蕎麦を食うこと」
妻と娘の写真を見れば「滑稽な顔」。

そんな手紙の中に、
一言だけ、本音が紛れているものがある。

「おれの様な不人情なものでも
しきりに御前が恋しい。これだけは奇特と云つて
褒めて貰わなければならぬ」

100通を超える手紙の数々は
素直になれない文豪が、留学期間をかけて書いた
長い長いLoveletter。

〜作家のLoveletter〜

2022年06月25日

執筆者波多野三代

〜作家のLoveletter〜 アンデルセン

世界的な童話作家、
アンデルセンはモテなかった。

そのモテない理由の一つが「Loveletter」
自分の惨めさを綴った自叙伝を、
恋文として送りつける癖があった。

「あなたが幸せになりますように。
そして、あなたのことを永遠に忘れられない
誰かのことは、どうか忘れてください。」

世界中の人々に愛された作家が、
どうしても得られなかった愛のお話。

〜作家のLoveletter〜