〜作家のLoveletter〜 シェイクスピア
ルネサンス期を代表する劇作家、シェイクスピア。
彼の作品の一つ「ソネット集」と言われる詩集は
Loveletterだったのではないか、と言われている。
この本には謎めいた言葉がある。
「このソネット集の唯一の産みの親であるW. H.氏に捧ぐ」
この人物が誰かは、いまだにわかっていないが
詩に繰り返し登場する「美少年」が、
この本を捧げられたW.H氏ではないかと言われている。
全154番ある詩のうち、18番から126番が、
この「美少年」への愛をうたっているからだ。
中でも最も有名なソネット18を戸所宏之の訳で読んでみる。
「君を夏の日に喩えようか。
いや、君はずっと美しく、穏やかだ。」
この詩は愛する人を輝かしい季節になぞらえ
その短さを、人のうつろいに重ねてゆく。
そして、こんな願いにも似た言葉で終わる。
「でも、君の永遠の夏を色あせたりはさせない、
もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ、
まして死神に君がその影の中で彷徨っているなんて
自慢話をさせてたまるか。
永遠の詩の中で君は時そのものへと熟しているのだから。
ひとが息をし、目がものを見るかぎり、
この詩は生き、君にいのちを与えつづける。」
シェイクスピアは眩しいほどの憧れをもって、
そのひとを言葉の中に永遠に刻もうとした。
ちなみに、愛を伝える手紙に「Loveletter」という名前をつけた人物は
他でもないシェイクスピアだと言われている。
〜作家のLoveletter〜
※ 翻訳:戸所宏之「はじめてのシェイクスピア」