2023年12月16日

執筆者廣瀬大

直立歩行#2

むかし、私たちの祖先は
見知らぬ人の歩きかたを見て
どこの村の人間か判断できたという。

畑仕事をしている地域の人の歩き方、
海で仕事をして生活する人の歩き方、
山の中で暮らす人の歩き方、
地域により、歩き方に癖があった。

いまでも観察さえすれば
歩き方はいろいろなことを教えてくれる。
その人の気分や性格までも。

2023年12月16日

執筆者廣瀬大

Photo by John Brighenti

直立歩行#3

森の中に足を踏み入れ、
土や木々の香りを楽しみながら歩く。
耳をすまし鳥や虫の声を聞く。

森の中をゆっくり歩くと、
都会を歩いている時に比べ、
ストレスホルモンが下がることがわかっている。
交感神経の活動も、血圧も、心拍数も下がるという。

うつ病や認知症、加齢に対して、
よく効く薬は、歩くことだという。
自然の中を歩けば効果はより大きい。

2023年12月16日

執筆者廣瀬大

Photo by Jeffrey

直立歩行#4

アップルコンピュータを共同で創業した
スティーブ・ジョブズはよく
歩きながら会議を行ったという。

歩きながら話し合うことで
よりクリエーティブな意見が出ると
考えていたようだ。

事実、スタンフォード大学の研究チームが
歩くことにより、創造的思考が上がることを
立証している。

ちなみに近年では、
歩くより、ランニングの方が
効果があるという説もある。

もし、それを知ったら彼は、
走りながらミーティングをしただろうか。

2023年12月16日

執筆者廣瀬大

直立歩行#5

「種の起源」で知られるダーウィンは
朝、昼、夕方、三度目の散歩に出かけ、
1日に数時間を散歩に費やしたという。

作曲家のベートーベンは
昼食後に鉛筆と五線譜をポケットに入れて、
長い散歩に出かけていた。

「クリスマスキャロル」などを書いたディケンズは
午後の2時まで机に向かって仕事に取り組み、
その後、3時間の散歩に出かけることを日課にしていた。

ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎も、
朝、散歩に出かけ、いま取り組んでいる小説について
考えたという。

散歩とは人類が持つ創造力を刺激する
最強のツールなのだ。

2023年12月16日

執筆者廣瀬大

Photo by micheile henderson on Unsplash

直立歩行#6

記憶を貯蔵しておく脳の中の海馬。
高齢者になると年に1〜2%ずつ縮んでいく。

ピッツバーグ大学の実験で、
高齢者に日常的に散歩してもらったところ、
海馬は平均して2%増加し、
記憶力も改善していた。
つまり、脳が若返っていたのだ。

もし、今日、食べた昼食を思い出せないのなら、
もし、昨日、何をしたか覚えていないようなら、
歩くことを強くおすすめする。

2023年12月16日

執筆者廣瀬大

Photo by Ken Douglas

直立歩行#7

歩くことが、人類を一歩前に進める。

人類がどのようにして二足歩行を始めたのか。
こんな説がある。

森を出て、川辺や海岸などの水辺で暮らしていた人類の祖先。
ぎりぎり顔を出して呼吸ができる深さの水の中に入り、
そこで貝や魚などをとって食べていたという。

水の浮力に助けられ水中でふわふわと、
二足歩行をしているうちに、
やがて、水から出ても二足歩行をするようになった。
水中に浸かっている体の毛は抜け落ち、
水から出した頭の毛が残った。

おもしろい説だが、
人類が二足歩行を始めた理由には諸説ある。
例えばこんな説も。 

もともと木の枝の上で二足歩行をはじめた人類の祖先。
両足で枝に立ち、両手で枝をつかみ、木々を移動していた。
そこからなんらかの理由で、地面に降り立った。
木の上で二足歩行をしていた類人猿が、
地面に降り、手をつくようになったのが
ゴリラやチンパンジーの祖先。
そのまま二足歩行で歩くようになったのが人間の祖先という説。

さまざまな説があるが、
二足歩行が、類人猿を人間にしたのは間違いないだろう。

二本の足で立ち、歩くことができるようになり、
人は両手で赤ん坊を抱いて歩けるようになった。
人は道具をつくることができるようになった。
そして、
手をつないで、他者と歩調を合わせて
歩くこともまた、できるようになったのだ。

2023年12月10日

執筆者櫻井瞭

おでんな話 「マフラー」

「マフラー、おいしいね。」

北海道では、よくある会話。

平たくて細長いさつま揚げのことを、
マフラーと呼ぶ。
呼ぶだけでなく実際に「マフラー」という名で売られている。

道民にはおなじみの
ご当地おでん。

「マフラー、おいしいね」
「このマフラー、ダシがよく染みてる。」
北海道なら当然の会話。

寒い夜は、マフラーであったまろう。

2023年12月10日

執筆者櫻井瞭

Photo by ageo_akaihana

おでんな話 「おでんのお」

日本の言葉にはよく
「お」がつく。

おなか、おかき、おひや、など、
これらは、女房言葉と呼ばれている。

室町時代、
豆腐に串を刺して焼いた
「田楽」が流行した。

おでんがく。
略して「おでん」。

ただ、この時はまだ、
焼きおでん。

今のような
煮込みおでんが登場するのは、
もう少し後の話。

2023年12月10日

執筆者川田琢磨

Photo by hirotomo t

おでんな話 「おでんサイエンス」

おでんで一番好きな具は何ですか?
いくつものアンケートが行われているが、
1位の具は大体決まっている。

味がよぉ~くしみた、大根。

大根に味が染みるのは、「拡散」と呼ばれる物理現象。
物質には、濃度が高い方から低い方へと移動し、
均等になろうとする性質がある。
だから、おでんの汁に溶けた旨味成分は、
大根に染み込むのだ。

さて、
「大根は冷めるときに味が染み込む」
という説があるが、本当だろうか。

実験で確かめた人たちがいた。
日本調理科学会に寄せられた論文によると、
塩分は加熱直後から浸透し、
コラーゲンは保温しているときに、
冷ました後は、グリセリドが大根にしみる、と。

料理に対する、人間の直感は侮れない。

2023年12月10日

執筆者櫻井瞭

おでんな話 「江戸のファストフード」

おでんは、
江戸時代のファストフード。

たくさん煮込んでおいて、
注文を受けたらさっと渡す。

江戸以前は、その場で豆腐に味噌を塗り、
じっくり炙る「焼きおでん」が主流だったが、

この頃からあらかじめ具材を煮込んでおいて、
その場ですぐ渡すスタイルに。

焼き時間を待てない、
せっかちな江戸っ子のためだ。