2023年11月26日

執筆者松岡康

Photo by Pictoscribe -

キノコがおしえてくれること 『キノコ、宇宙へ』

キノコがくれる未来の話。

キノコをつくる菌糸体。
乾燥させると軽くて、柔軟で、熱にもつよい。

そんな菌糸体を使って
人工衛星を作るプロジェクトがあるのをご存じだろうか。

このキノコ製の人工衛星。
宇宙の過酷な環境でも耐えられ、
さらにサステナブルで環境に優しいと言われている。

地面に根をはり、広がったキノコが、
宇宙を飛びまわる日も近いのかもしれない。

2023年11月26日

執筆者礒部建多

Photo by Jared Tarbell

キノコがおしえてくれること 『究極のグリーン素材』

キノコがくれる未来の話。

キノコを形成する、菌糸。
この菌糸の集合体である菌糸体は、
成長させることも、
分解させることも容易なため、
幅広い用途に使用可能な素材になれる。

例えば、衣類。
プラスチック代わりの梱包材。
さらには、建物の建材にも。
低コストで、環境にも優しく、
化石燃料への依存度を低下させることができるのだ。

もはやキノコは、食材の域を超えて、
人の生活のインフラにもなり得る。
かもしれない。

2023年11月26日

執筆者松岡康

Photo by Omar Bárcena

キノコがおしえてくれること 『キノコの会話』

キノコがくれる未来の話。

「キノコは会話する」と聞いたら、
みなさんはどう思うだろう。

研究では、キノコ同士が電気信号を送ることで、
コミュニケーションを
取っていることが明らかになっている。

単語の総数は50以上にもなるという。

さらに驚くべきは、菌糸を通じての信号伝達は
植物をも巻き込んで行われているということ。

遠くない未来、人間も
キノコを通じて森とコミュニケーションすることが
できるかもしれない。

2023年11月26日

執筆者奥村広乃

Photo by Hiromi Sagi

キノコがおしえてくれること 『想像力とキノコ』

キノコがくれる未来の話。

その形で、色で、
人の想像力を刺激してきたキノコ。

妖精の伝説。
ゲームのキャラクター。
子どもが好きな歌。
ぬりえやシールなどでも大人気。

科学の力はキノコの不思議を
日々解き明かしている。

それでも
なんともいえないキノコの魅力は
心をうごかすパワーがある。

2023年11月25日

執筆者川野康之

Photo by GothPhil

函館の石川啄木 『陸奥丸』

午前3時に青森港を出た陸奥丸(むつまる)は
津軽海峡を進むにつれ大きく揺れた。
明治40年5月5日、
石川啄木は新天地北海道へ向かっていた。
代用教員をしていた岩手県渋民村の小学校で
ストライキを扇動したため免職となり、
追われるように村を出たのだ。
一家は離れ離れになった。
妻子、母、妹を親戚や知人のもとへ預け、 
自分は函館にある文学同好会を頼るつもりだ。
石川啄木、21歳。
新しい運命を北海道で開拓しようと思っていた。

石をもて追はるるごとく    
 ふるさとを出でしかなしみ      
 消ゆる時なし  (石川啄木)

2023年11月25日

執筆者川野康之

函館の石川啄木 『函館港』

啄木を乗せた陸奥丸は函館港に着いた。
函館の文学同好会『苜蓿社(ぼくしゅくしゃ)』に事前に電報で知らせていたが、
誰も港に迎えに来ていなかった。
当てが外れた。
途方に暮れていると、向こうから男たちが泥を跳ねながら走ってきた。
苜蓿社の同人たちである。
みな啄木と初対面だった。
実は函館港には桟橋が二つあり、
彼らは別の桟橋で待っていたのだ。
新天地の仲間と出会って、啄木はやっと笑顔になった。

2023年11月25日

執筆者川野康之

函館の石川啄木 『同人たち』

苜蓿社の同人たちは啄木を大歓迎した。 
同人の一人の下宿に啄木は同居した。
すぐに文学を愛好する青年たちのたまり場となり
夜遅くまで文学を語り恋愛を語り合った。
世間の苦しみとは無縁の夢の国にいるような気分になった。
仲間の紹介で函館商業会議所の臨時雇いになった。
啄木にとってこの仕事は別世界の経験だったが
「好奇心動かさざるはなかりき」と前向きにとらえている。

2023年11月25日

執筆者川野康之

photo by Uncle Carl

函館の石川啄木 『鹿ノ子百合』

啄木は函館区立弥生尋常小学校の代用教員になった。
月給は 12円。
児童は1100名を超え、
職員室には15名の職員がおり、そのうち8人が女性教師だった。
この都会の学校は渋民の時よりも啄木にはおもしろくなかったようで、
それよりも「具さに所謂女教員生活を観察したり」と日記に書いている。
「真直に立てる鹿ノ子百合なるべし」
と印象を記した橘智恵子という女性教師に
啄木は惹かれた。
『一握の砂』の「忘れがたき人々二」の章に収められている22首は
すべて橘智恵子を詠んだものである。

 世の中の明るさのみを吸ふごとき
 黒き瞳の
 今も目にあり (石川啄木)

2023年11月25日

執筆者川野康之

函館の石川啄木 『親友郁雨』

函館に来て啄木は多くの友ができた。
中でも宮崎郁雨(いくう)という生涯の親友を得た。
郁雨は苜蓿社の仲間の一人であった。
「宮崎君あり、これ真の男なり」
と啄木は日記に書いている。
郁雨は啄木の才能を高く評価し、敬愛した。
啄木のもっともよき理解者であり、味方であった。
生活力のない啄木のために、精神的にも金銭的にも、
献身的に支えてくれた。
奔放な啄木とは正反対の
真面目で純情な郁雨を啄木も愛した。

大川の水の表を見るごとに
郁雨よ
君のなやみを思ふ  (石川啄木)

2023年11月25日

執筆者川野康之

函館の石川啄木 『家族との再会』

函館の啄木は家族を呼び寄せた。
まず妻節子が娘京子を連れてやってきた。
家族3人、青柳町の借家に入った。
それから野辺地にいる母を迎えに行った。
小樽にいた妹光子も来て
一家5人の生活が始まった。
「家庭は賑はしくなりたれども…六畳二間の家は狭し」
と啄木は日記にぶつぶつ書いているが、
やっと一息つけた明るい安堵感も感じられる。

 わがあとを追ひ来て
 知れる人もなき
 辺土に住みし母と妻かな  (石川啄木)