2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by 江戸村のとくぞう

近代建築の巨匠・前川國男 「国立西洋美術館・新館」

国立西洋美術館、
設立20周年の1979年、
新館が竣工した。

設計は前川國男。
本館の建設にも携わった、
コルビュジエの弟子。

本館の全体像を損なわないよう、
接続部分は極力少なく、
それでいて一体で機能するように
増築されている。
樹木を抱き込むように配置され、
緑深い中庭を生み出した。

コルビュジエへのリスペクトを感じる、
師弟合作の作品だ。

2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by 663highland

近代建築の巨匠・前川國男 「東京文化会館」

国立西洋美術館設立の2年後、
向かい合う敷地に東京文化会館がオープンした。

設計者は、前川國男。
国立西洋美術館を設計したコルビュジエの
弟子であり、日本の近代建築の牽引者だ。

軒高は対面の西洋美術館に揃え、
正面のガラス窓の縦桟は、
西洋美術館前庭の床の目地に合わせている。

師弟の競演がここでも繰り広げられている。

2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by Toshihiro Gamo

近代建築の巨匠・前川國男 「東京都美術館」

国立西洋美術館新館、東京文化会館を手掛けた、
近代建築の巨匠、前川國男は、
同じ上野の森の東京都美術館も設計した。

旧館建替の依頼だった。
既存樹木を残して、軒高を15mに抑え、
旧館より狭い敷地に1.8倍の容量を入れ込みたい、
という、難しい要望。

前川は、総面積の50%以上を地下に埋め、
真ん中に回廊のある広場を設けた。
結果、人々が行き交う生き生きとした
空間が生まれた。

2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by Tnk4a

近代建築の巨匠・前川國男 「木村産業研究所」

前川國男の最初の作品は、
青森県弘前市の木村産業研究所。

前川は当時27歳。
ル・コルビュジエのアトリエから帰国して
2年後のことだ。
コルビュジエのガルシュの家に通じる、
装飾の少ない、すっきりとした白い建築。
ここから日本の近代建築の巨匠への道は始まった。

多少の改修は施されているものの、
サッシや床タイルなどに、
当時の面影を見ることができる。
2021年に国の重要文化財に指定された。

現在は、弘前こぎん研究所が入所している。

2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by Dick Thomas Johnson

近代建築の巨匠・前川國男 「2度の紀伊國屋書店」

前川國男は、紀伊國屋書店を2度、設計した。
1度目は1947年、戦後間もなく、
バラックが立ち並ぶ新宿に建てられた。
木造2階建て、大谷石のアプローチ、
吹き抜けのある店舗。
モダニズムの美学を体現したデザインだった。

2度目は、1964年。
最初の店舗と同じ場所に
現在の紀伊國屋書店が誕生した。
大型書店、画廊、小劇場のある複合ビル。
足元には広場、裏通りに抜ける道空間を設置した。
都市環境に関わる建築の可能性を
提示したといわれている。

2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by つ

近代建築の巨匠・前川國男 「国立国会図書館新館」

国立国会図書館新館は、
前川國男の最晩年の建築のひとつだ。
正確には、前川建築事務所が設計を請け負っている。

前川は、
建物に向かうアプローチを重要視していた。
アプローチが決まれば、設計の80%は決まったようなものだ、
と語ったという。
国立国家図書館新館でも、本とどう向き合うかを考えた。
地下鉄の駅から本に出会うまでを意識している。
本館にそって整備したアプローチに桜を植え、
大きな石垣で足を止めさせ、新館へと導く。
入り口はあえて空間を狭くしている。
天井の低いエントランスを抜けると、
4層の閲覧室を見渡す、
自然光に包まれた吹き抜けホールがあらわれる。
本との出会いの高揚感が味わえる。

1986年6月3日、
国立国会図書館新館の竣工引き渡し式に
前川は出席した。
秘書に体を支えられ、館内を見て回った。
吹き抜けのホールでは、
体を逸らせひっくり返りそうになりながら、
「ウンウン」と言っていた。

この新館の地下には増え続ける蔵書を想定し、
8層の書庫が備えられている。
書庫で働く職員のために、
地下8階にまで自然光が届くように掘り下げた、
光の庭がある。
前川は、地下4階の全体を見渡せる場所で、
上部からの光に照らされる壁を見つめ、
「うーん」とうなったまま、しばらく黙ってしまった。
そして、ぽつりと「アイーダの第4幕だ」と
つぶやいた。
ヴェルディのオペラ「アイーダ」の4幕、
地下牢のシーンは舞台美術の見せどころでもある。
前川はパリのル・コルビュジエのアトリエで学んでいた時代、
クラシック音楽にも親しんでいた。

それから、3週間あまりのち、前川國男はこの世をさった。
享年81歳だった。

明治に生まれ、大震災と2度の大戦を超え、
近代建築の実現を牽引してきた前川國男。
彼がいなくなっても、
日本各地の建築で、彼の美学に触れることができる。

2023年10月29日

執筆者名雪祐平

話のカクテルバー 「ソルティドッグ」

いらっしゃいませ、話のカクテルバーへ。

働きすぎのあなたにお似合いの一杯は、
ソルティドッグ。

由来は、イギリス海軍の甲板員。
激しい波しぶきを浴びて、
全身潮まみれで働く男たちを
「塩辛い野郎」と呼んだことから。

グラスの縁で、キラキラする塩。
遥か海から、恵みの結晶。

2023年10月29日

執筆者名雪祐平

話のカクテルバー 「アイリッシュコーヒー」

いらっしゃいませ、話のカクテルバーへ。

寒がりのあなたにお似合いの一杯は、
アイリッシュコーヒー。

生まれたのはアイルランドの西、
水上飛行場の給油基地。
厳冬期、待合室で凍えていた乗客のために考案され、
たちまち人気に。

アイリッシュ・ウイスキーを注いだ
角砂糖に火をつければ、
青白い炎があがる。

身も心もあたたまる、一杯の夢。

2023年10月29日

執筆者名雪祐平

話のカクテルバー 「ギムレット」

いらっしゃいませ、話のカクテルバーへ。

別れを惜しむあなたにお似合いの一杯は、
ギムレット。

レイモンド・チャンドラーの小説
『長いお別れ』に有名なシーンがある。

深い友情で結ばれた
探偵マーロウと、依頼人レノックス。

二人にとって、ギムレットは、
いつものバーで飲む、締めの一杯。
しかし、ある事件のせいで永遠の別れを強いられる。
名残惜しむ二人。別れたくない。

そこで出た、
ハードボイルド小説史上に残る名台詞。

 ギムレットにはまだ早すぎる。

2023年10月29日

執筆者名雪祐平

話のカクテルバー 「モスコミュール」

いらっしゃいませ、話のカクテルバーへ。

売れ残りに悩むあなたにお似合いの一杯は、
モスコミュール。

1940年代、ハリウッド。
ジンジャービアを仕入れすぎたバーテンダーが困り果て、
ウオッカを合わせてモスコミュールを考案。

同じく、売れ残っていた銅のマグカップに
入れて出したら大評判。

売れ残り×売れ残り=発明