2023年09月02日

執筆者大友美有紀

アンリ・ルソー 「夢 1910年」

素朴派の画家、アンリ・ルソーは、
その生涯のほとんどを無名のまま過ごした。
けれども晩年、ピカソに見出され、
詩人のアポリネールとも交流を深め、
ようやく注目されることになった。

ルソーはジャングルの絵を数多く描いたが、
実は一度もフランスを出たことがなかった。
兵役でメキシコに行き、そこで密林の風景に出会ったという逸話がある。
これは、アポリネールたちが作り上げた伝説と言われている。

1910年、ルソーは大作「夢」を描く。
ジャングルで長椅子に横たわる裸婦が描かれている。
ルソーが恋焦がれた女性だともいわれている。
彼女を象やライオンがそっと見つめている。
アポリネールは
「今年は誰もルソーの絵を見て笑わないだろう」と言った。

このころになってようやく絵の注文が入り始めた。
ルソーは忙しくなり、初めて評論家のインアビューを受ける。
しかし、足の怪我がもとで、亡くなってしまう。

1910年9月2日のことだった。

ルソーはこの作品のために詩も書いている。

Yadwigha dans un beau rêve
S’étant endormie doucement
Entendait les sons d’une musette
Dont jouait un charmeur bien pensant.
Pendant que la lune reflète
Sur les fleuves [or fleurs], les arbres verdoyants,
Les fauves serpents prêtent l’oreille
Aux airs gais de l’instrument
 

美しい夢のなかのヤドヴィガは
おだやかに眠り
正統派魔術師の奏でる
縦笛の音を聞いた
花と青々とした木々を
月が照らし
けものや蛇が
縦笛の調べに耳を傾けた

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

Photo by Dick Thomas Johnson

百年後の皆さまへ 「わたしはマリー」

1923年生まれの百歳。
なまえは、マリー。森永マリー。

ほんのり、牛乳とバターが香る。
大正浪漫が漂うビスケット。

マリーというなまえは、
フランス革命に散った
マリー・アントワネットが由来。
ビスケットの模様はその家紋だそう。

あした、食べるパンがなければ、
マリーを食べればいいじゃない?

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

百年後の皆さまへ 「わたしはプラネタリウム」

1923年ドイツ生まれの百歳。
なまえは、カールツァイスⅠ型。
世界初のプラネタリウム。

まず、空を割った。
直径10mのドームを32分割。
そこに、4500個の恒星を映しだす。
5つの惑星を動かし、
星座や天の川、太陽、月の満ち欠けまで
そっくり。

真昼に、
降るような星空が観られるなんて。
人々は仰天した。

百年前の壮大な
バーチャルリアリティ。

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

Photo by Jaguar MENA

百年後の皆さまへ 「わたしはルマン24」

1923年フランス生まれの百歳。
なまえは、ル・マン24時間耐久レース。

極端に高性能なレーシングカーは、
スピードは凄いが人々には手が届かない。
これだとモータースポーツが不人気のまま。

ならば、普通の車でレースができないか。
けれども一般車は
スピードも見た目も、地味。

どうするか?
24時間走ればいい。

1秒でも速く、ではなく、
1mでも長く走った車が優勝。

夜の闇も走れ。
ヘッドライトの性能向上は、
ル・マンの恩恵と言われている。

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

Photo by Masahiko Satoh

百年後の皆さまへ 「わたしは野音」

1923年生まれの百歳。
なまえは、日比谷野音。

伝説的ロックバンド、キャロルの
解散コンサートで爆竹が暴発。
舞台が燃え落ち、バンドは燃え尽きた。

アイドル、キャンディーズが
人気絶頂で解散宣言。
「普通の女の子に戻りたい」と泣き叫んだ。

数々の伝説を生んだ野音。
ビル街の根本で、自由の風よ、吹け。

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

百年後の皆さまへ 「わたしは女性デー」

1923年生まれの百歳。
なまえは、日本の女性デー。

参政権もない時代。
日本初の国際女性デー集会に、
立ち上がった人たちがいた。

それから百年。
日本のジェンダーギャップ指数は、
過去最低の世界125位。

とくに、政治と経済の分野が酷く、
このままだとギャップ解消には、
189年かかるという。

自然な解決は、ない。

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

Photo by toyohara

百年後の皆さまへ 「わたしは文藝春秋」

1923年生まれの百歳。
なまえは、文藝春秋。

雑誌名であり、
企業名でもある。

実は、文藝春秋には企業理念がない。

創業者であり、流行作家の菊池寛が
文藝春秋創刊に寄せた言葉が、
社の精神なのだという。

「私は頼まれて物を云うことに飽いた。
 自分で考えていることを、
 読者や編集者に気兼ねなしに、
 自由な心持で云って見たい」

なんとも、正直。

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

Photo by shibainu

百年後の皆さまへ 「わたしはホテルウエディング」

1923年生まれの百歳。
なまえは、ホテルウエディング。

きっかけは、関東大震災。
多くの神社仏閣が火の海にのまれ、
婚礼ができなくなってしまった。

すぐさま動いたのが、帝国ホテル。
ホテル内に神殿を設置し、挙式と披露宴を
一つのホテルで完結できるようにした。

これが原型となり、
ホテルウェディングは日本文化となった。

神は、ホテルに宿る。

2023年08月27日

執筆者名雪祐平

Photo by European Communities

百年後の皆さまへ 「わたしはインターポール」

1923年生まれの百歳。
なまえは、国際刑事警察機構。
通称、インターポール。

テロやサイバー攻撃、
国際詐欺などが増えるなか、
ますます活躍が期待される。

国際手配犯へ、聞こえますか。

なお、このメッセージは自動的に消滅する。

2023年08月26日

執筆者波多野三代

〜暑気払いはいかが〜 ペルーのカエルジュース

南米ペルーでは、
夏バテ対策にカエルのジュースを飲む所がある。

その名も「ラナジュース」
注文すると、生きたカエルを取り出し皮を剥ぎ、
豆のスープの中で茹で上げる。
豆乳、蜂蜜、うずらの卵、スパイスと共に
ミキサーにかけて、出来上がり。

一杯飲めば栄養満点。
今日も太陽の下、
人々はジューススタンドから元気に出かけてゆく。

〜暑気払いはいかが〜