2023年08月05日

執筆者廣瀬大

Photo by Nick

相棒 #7

相棒がいること。
それこそが奇跡を起こす最大の秘訣。

「パルプ・フィクション」で世界中を驚かせ、
以降、話題作を次々に生み出し続けている
映画監督クエンティン・タランティーノ。

彼が監督デビューするきっかけをつくったのは、
あるパーティーで偶然、出会った、
まだ駆け出しのプロデューサー、ローレンス・ベンダーだった。

冷静で、計画性に長けているベンダー。
感情的で、すぐに熱くなるタランティーノ。
二人はまさに陰と陽の関係だが、
出会ってすぐに意気投合する。

脚本は完成しつつあるが、後援者が見つからない。
映画制作の目処が立たず、監督への道が開けない。
そんなフラストレーションを貯めるタランティーノ。

チャンスは突然やってきた。
元々、俳優志望だったベンダー。
当時、通っていた演技の教室のコーチに、
タランティーノの書いた「レザボア・ドッグス」の脚本を見せた。

コーチは言う。
「誰でも好きに選んでいいなら、主演は誰にしたい?」
ベンダーは言う。
「絶対に、ハーヴェイ・カイテルだな」
コーチは言う。
「そうか! 彼は私の妻と知り合いだよ」

脚本はコーチから、彼の妻、そして、
すでに名俳優となっていたハーヴェイ・カイテルの元にわたり、
プロジェクトは一気に動き始める。
そしてそこから20年以上に渡り、二人は一緒に映画をつくり続けることになる。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

Photo by Aidan Xuyen

花は語らず 「人間を生んだ花」

われわれは、いつ、
原始人から人間になったのか。

初めて衣服をまとった時?
初めて言葉を話した時?          

それは、
恋する相手に初めて花をささげた時。
明治の思想家、岡倉天心はそう説いた。

生きるだけなら、無用な花。
その微妙な使い途をみつけた時、
獣の本能をおさえて人間らしくなり、
“芸術の国に入ったのだ”と。

さいきん、花をささげましたか?
人間していますか?

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

Photo by Peter Stenzel

花は語らず 「花は友」

花は、騒ぎがおさまると
いったいどこへ?
大量に飾られ、用済みになれば、無惨なごみ。

明治の思想家、岡倉天心は怒っていた。

祝福の時も、死す時も共にある。
病人も慰める。
人間はもう、花なしでは生きていけない。

花を邪険にする態度はやがて、
自然を破壊する人間中心主義に陥る、と。

それから120年。
この夏も記録的豪雨が止まない。

天心先生が怒っている。
人間め。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

花は語らず 「花の性分」

急いで歩く人々は、
足もとの花にも気づかない。

花を見て。
彼女は、小さな花を巨大に描いた。

20 世紀アメリカを代表する画家、
ジョージア・オキーフ

1926年作『黒イリス』は、
官能的な花のなまめかしさ。
女性器の暗喩とされたが、
そんなフロイト的解釈を
オキーフは真っ向否定している。

オキーフが肯定したのは、
自然と調和しようとする東洋の精神性。

座右の書物があった。
日本の思想家、岡倉天心『茶の本』。
とくに花の章には強く惹かれ、愛読。
オキーフの創作の礎となった。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

花は語らず 「花の宇宙」

“リアリズムほど、
リアルでないものはない“

見抜いたのは、
20世紀アメリカの偉大な抽象画家、
ジョージア・オキーフ

物事の取捨選択、強調によってこそ
物事のリアル、本質に迫れる、と。

オキーフは、花を超拡大して描き、
抽象化させた。

すると花は、宇宙になった。
本質、あらわる。
クラクラするほどの自然界だ。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

花は語らず 「花と水玉」

花の女王、アメリカの偉大な画家
ジョージア・オキーフ

1955年、知らない日本人女性から手紙が届く。
芸術への熱い思想が綴られていた。
オキーフは、こちらへ来ればいいと
激励の返事を書いた。

女性は単身ニューヨーク行きを決意。
渡米後もオキーフが支援を続けた、前衛芸術家。

やがて水玉の女王と呼ばれる
草間彌生である。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

Photo by Norio Nomura

花は語らず 「秘すれば花」

むかしむかし、600年前。
能楽師 世阿弥は、父 観阿弥の教えを
『風姿花伝』にまとめた。

“秘すれば花”

隠すからこそ価値が出る。

観客を、あっと言わせる秘策があるか。
秘すれば花は、
人気という不安定極まりないものを
つなぎとめるサバイバル戦術でもあった。

室町時代から明治時代になるまで、
門外不出だった『風姿花伝』
そのものが、秘すれば花。

500年のサバイバル勝負に、
世阿弥は勝った。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

花は語らず 「珍しきが花」

シェイクスピアが活躍する200年ほど前。
日本には、世阿弥がいた。

観客が必ず感動する方法はないか?
身分や時代を越えて受ける普遍性とは?

世阿弥がたどりついた奥義、
「珍しきが花」
新しいもの、珍しいものこそ、
感動の根源、花がある。

世阿弥は、つぎつぎと新作を披露し、
圧倒的な面白さに、観客は熱狂した。

晩年は、政治的弾圧で不遇となったが、
世阿弥の能は滅びなかった。

600年間、美しく。

2023年07月30日

執筆者名雪祐平

Photo by halfrain

花は語らず 「花の誇り」

花は何も語らない。
人間が勝手に、花の魂をうかがう。

明治の思想家、岡倉天心によれば、
死を誇りとする花もある。

桜は散り際、
空に舞い、水に流されながら、
こう語るように見えると。

“さらば春よ。
われら永遠に旅立つ“

2023年07月29日

執筆者波多野三代

Photo by JRAMAN JCHANDRAN on Unsplash

〜夏の音〜 カエルの声

夏の夜の風物詩、カエルの大合唱。

繁殖期の夏、オスのカエルは求愛のために鳴く。
より大きく響くものがモテるが、声が重なると目立たない。
そこでまわりの雄とは少しずらして鳴く。
「合唱」と言っているが、実は輪唱だ。

夜に鳴くのは天敵に見つからないようにするためだ
集団に紛れながらも、ちょっと目立ちたい…
カエルの輪唱は、生きるための楽譜でできている。

〜夏の音〜