2024年03月02日

執筆者小林慎一

Photo by TED Conference

狂気と正気の間に#1

イギリス生まれのジャーナリストのジョン・ロンスンは、

精神障害を診断する本を手にする。
興味本位で、テストをすると、
374種類の精神障害のうち

12種類が自分に当てはまることが分かった。



全般性不安障害。悪夢障害。
親子関係の障害。仮病を使う障害。



全般性不安障害と、仮病の障害を同時に発症するのは、

無理があると彼は考えた。


彼は、精神医学に批判的な団体のリーダーにコンクトを取った。

2024年03月02日

執筆者小林慎一

Photo by Giorgio Trovato on Unsplash

狂気と正気の間に#2

ジャーナリストのジョン・ロンスンは、

精神医学に批判的な団体のリーダー、
ブライアンとランチを共にした。



現代の精神医学に問題があることを証明できるかい?

とジョンはブライアンに質問した。
彼はこう答えた。



「もちろんできるとも。ブロードムアにいるトニーに会えばいい。」

ブロードムアとは、重大な刑事事件を起こした
犯罪者のための精神病院だ。

2024年03月02日

執筆者小林慎一

Photo by Cory Mogk on Unsplash

狂気と正気の間に#3

サイコパスのフリをし、重犯罪者精神病院に収監されたトニーは
ジャーナリストのジョン・ロンスンにこう語った。



正気だと思わせることはとても難しい。

雑誌ニューサイエンスで米軍が爆弾を探すハチを訓練する記事を読み
その話しを看護婦に聞かせたところ
ハチが爆弾を探せると信じているとレポートに書かれたという。



周りは連続殺人犯ばかりで怖くて部屋にこもっていたら

協調性がないことが精神障害の証拠だと指摘され

足の組み方が異常だと言われた。

ジョンはトニーの主治医にアポイントを取った。

2024年03月02日

執筆者小林慎一

Photo by Javardh on Unsplash

狂気と正気の間に#4

ジャーナリストのジョン・ロンスンは
狂ったフリをして重犯罪者精神病院に入れられている
トニーの主治医に取材をした。



彼はこう話した。

裁判でトニーが狂ったフリをしていること分かっていました。

狂ったふりをして人を操ることがサイコパスの特徴です。

口が達者で、共感が欠如し、

サイコパスな者はピンストライプのスーツを好んで着ます。

彼が正気に見えることすべてが彼の狂気の証拠なのです。

2024年03月02日

執筆者小林慎一

Photo by Elliott Blair on Unsplash

狂気と正気の間に#5

統計によると100人に1人がサイコパスで

企業のCEOになると4人に増える。



犯罪心理学者のロバート・ヘアによると

それは資本主義の結果だと言う。



口が達者で、人を操り、非道な決断をしなければいけない。

このことは現代に生きる私たちすべてに関係がある。



精神障害を取材しているジャーナリストのジョン・ロンソンは、

アル・ダンラップにアポイントを取った。



ダンラップは、弱体化した企業に参入し、多くの従業員を解雇し、

アメリカのいたるところをゴーストタウンにした人物だ。



ダンラップの庭には様々な肉食動物の彫刻がにあった。

そして、彼は、巨大な肖像画の前でインタビューに答えた。



「あなたは過剰な自尊心を持っていますね」

「自分は信頼するものだよ」



「あなたは人を操りますね」

「それがリーダーシップだ」



ジョンはインタビューをしながら、

ダンラップのサイコパスな部分を探していることに気づいた。

彼は、青少年は非行をしてはいけないと語った。

彼は、一度離婚をしていて、

妻をナイフで脅し、人の肉の味を知りたいと言ったという。

しかし、2度目の結婚は40年以上つづいている。



取材を終えると、

重犯罪者精神病院に収監されているトニーから電話がかかってきた。



「俺は、後悔の欠如がサイコパスの証拠だと言われ、
後悔を口にすると、人をだまそうとしていると言われる。

何をいってもサイコパスの診断をされるんだ」



そして、こう付け加えた。「もうすぐ、俺の審査があるんだ。来るかい?」



ジョンが審査に立ち会ったその日に、トニーはついに釈放された。
 
依然スコアは高いが、無期限に収監すべきでないというのが理由だった。



廊下でトニーに会うとジョンはこれからどうするのか尋ねた。



「好きな女がベルギーにいるんだ。だけど彼女は結婚しているから、

まずは旦那と別れさせなきゃいけない」



ジョンは、取材をまとめた本の中でこう述べている。
トニーもダンラップも半分はサイコパスだ。私もそうかもしれない。

社会は曖昧さを嫌うが、サイコパスかどうかの、そのグレーゾーンが、

人を複雑にし、それが人間性をつくるのではないだろうか。



釈放されて2年後、トニーがジョンに電話をしてきた。

バーで喧嘩をして1ヶ月だけ刑務所に入ったという。

トニーはこう言った。

「お礼をしたいんだ。飲みに、いかないか?」

ジョンは、その申し出を断った。

2024年02月25日

執筆者澁江俊一

Pict by Flor Cabrera

モモの言葉より 「ベッポの仕事の哲学」

時を超えて愛される児童文学「モモ」には
今こそ読み返したい言葉がある。

モモの親友の年老いた道路掃除夫ベッポは
長い長い道路を掃除する時の心構えを
モモに話してくれた。

いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、
わかるかな?
つぎの一歩のことだけ、
つぎのひと呼吸(いき)のことだけ、
つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。
いつもただつぎのことだけをな

するとたのしくなってくる。
これがだいじなんだ。
たのしければ、仕事がうまくはかどる。
こういうふうにやらにゃあだめなんだ。

どんな仕事でも
遠くにある終わりではなく
目の前にある楽しさを大事にする。
それがいつか必ず、
いい仕事になっていくはずだから。

2024年02月25日

執筆者澁江俊一

Pict by juliahiddles

モモの言葉より 「灰色の男を追い払った言葉」

時を超えて愛される児童文学「モモ」には
今こそ読み返したい言葉がある。

モモがくらす街の人々の時間を奪うため
時間貯蓄銀行からやってきた灰色の男。
モモから友だちを引き離そうと
言葉たくみに誘惑する男に、モモは言う。

それじゃ、あんたのことが好きな人は、
ひとりもないの?

この言葉は怪しい灰色の男に
計り知れないダメージを与えた。

2024年02月25日

執筆者奥村広乃

Photo by Sipalius

モモの言葉より 「カシオペイアの行動原理」

時を超えて愛される児童文学「モモ」には
今こそ読み返したい言葉がある。

時間の国からかえった主人公モモは、
案内役のカメ、カシオペイアが
自分の家にいることに気づく。

なぜ一緒に来たのかと尋ねると

カメのカシオペイアは答える。

ワタシガ ネガッタカラ!

スケジュール帳にリマインダーではなく
心で行動を決める自由が
私たちにはあるはずだ。

2024年02月25日

執筆者礒部建多

Photo by Alexey Savchenko on Unsplash

モモの言葉より 「生きた時間」

時を超えて愛される児童文学「モモ」には
今こそ読み返したい言葉がある。

人々の盗まれた時間を取り戻すため、
時間の国にたどり着いたモモ。
そこで、時間を司るマイスターホラは、モモにこう説く。

人間はひとりひとりがそれぞれじぶんの時間をもっている。
そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、
生きた時間でいられるのだよ。

人間らしく生きる、
そんな当たり前で、忘れがちなことを、
この言葉が何度でも思い出させてくれる。

2024年02月25日

執筆者松岡康

Photo by Jon Tyson on Unsplash

モモの言葉より 「もったいない時間」

時を超えて愛される児童文学「モモ」には
今こそ読み返したい言葉がある。

時間泥棒によって、
モモの街に住む大人たちは時間を盗まれた。

子供たちもまた、 “将来に役に立つ”ことしか
させてもらえなくなっていた。

かつて楽しく遊んだ仲間たちを誘い出そうとするモモだが、
時間のむだだと断られてしまう。

モモはいう

いままでだって、むだになんかしなかったわ

遊びだって無駄な時間などない。

忙しい日々の中
もったいないと切り捨てた時間が
実は一番もったいないのかもしれない。