2023年06月10日

執筆者佐藤理人

時の記念日 「時間厳守の時代」

日本人は時間に厳しい。諸外国が抱くこの印象は、
電車の運行時間の正確さによるところが大きい。
先進国でも10分程度の遅延は普通だし、
定刻より早く出発したり、運行のキャンセルも珍しくない。

日本の鉄道はなぜここまで時間厳守が要求されるのか。

きっかけは1894年の日清戦争。
輸送物資と人員が急増すると、鉄道の需要が高まった。
しかし狭い日本では、線路の幅も西欧諸国より狭く、
一車両あたりの輸送量も少なかった。

輸送能力を上げるには、運行頻度を上げなければならない。
そして運行頻度を上げるには、時間の正確さが不可欠だ。
戦争の影響で日本の鉄道は、時間精度を急速に向上させた。

戦争の鉄道バブルにより1899年までに、
全国で約60社の鉄道会社が営業免許を取得。
路線間の乗り継ぎが盛んになると、
電車の遅延は厳しく批判されるようになった。

かつて明治の鉄道員には侍出身の士族が多く、
几帳面で、完璧にマニュアルを守ろうとした。

しかし現代日本における時間厳守の通念は、
律儀な民族性だけに依るものではない。
当時の鉄道が成し遂げた、社会発展の賜物だった。

今日は時の記念日。

2023年06月04日

執筆者櫻井瞭

虫のはなし 「手塚オサムシ」

6月4日は、虫の日。
日本昆虫倶楽部が制定した記念日。
その初代会長は、漫画家・手塚治虫。

手塚治虫は小学校のときから昆虫が好きで
「オサムシ」という昆虫から取ったというペンネームは
本名の「治」に「虫」の一字を足したもの。

虫が登場する手塚治虫の漫画は、180作近くあるという。

2023年06月04日

執筆者川田琢磨

虫のはなし 「おなかの虫の犯人」

6月4日は、虫の日。

腹の虫がおさまらないとか、
虫の居所が悪いとか、
体の中の謎の虫を、誰が考えたのか。

犯人は、戦国時代の医者。

当時、様々な病気の原因は「鬼」のせいだとされ、
祈祷師が治療の主役だった。

ちっとも商売にならない医者は、
病気の原因は患部に潜む「虫」のせいで、
それを退治するには針治療なのだと、
世間に広めた。

虫のいい話である。

2023年06月04日

執筆者櫻井瞭

Photo by Ryosuke Yagi

虫のはなし 「虫の音と声」

6月4日は、虫の日。

ミーンミンミン。
これは、セミの音だろうか。
それとも、セミの「声」だろうか。

不思議なことに、日本人は虫の音を、
「声」として捉える性質があるという。

虫の鳴き声に対して、
日本語を母国語として育った人は「左脳」が、
そうでない人は「右脳」が反応。

つまり、
言葉として左脳で聞いているか、
音として右脳で聞いているかが、
実験により明らかになった。

「セミの声」を英訳すると、the sound of cicadas.
the voice of cicadasとは、あまり言わない。

閑さや岩にしみ入る蝉の声

松尾芭蕉

2023年06月04日

執筆者櫻井瞭

Photo by matthew.nelson

虫のはなし 「儚い羽」

6月4日は、虫の日。

儚さの象徴としても語られる「カゲロウ」。
成虫になると、1日足らずで死んでしまう。

そのからだには、食事をするための口が無い。
限られた時間の中で、子孫だけを残し、散ってゆく。

カゲロウの学名は、「Ephemeroptera(エフェメロプテラ)
儚い羽、という意味。

2023年06月04日

執筆者川田琢磨

Photo by Christian Dutto

虫のはなし 「儚い羽の反論」

6月4日は、虫の日。

世界一、成虫の寿命が短い虫、「カゲロウ」。
実は、空を飛んだ最初の生物だと言われている。

その誕生は、3億5000万年前。

儚いカゲロウと言うが、
彼らからしてみれば、
20万年程度しか存在していない人類の方が、
よっぽど儚い存在だろう。

2023年06月04日

執筆者川田琢磨

Photo by Lukas Pohlreich

虫のはなし 「生きた宝石」

6月4日は、虫の日。

「生きた宝石」と呼ばれる蝶がいる。
アマゾンに棲むモルフォチョウ。
光り輝くコバルトブルーの羽を持つ。

こんな逸話がある。

その美しい羽から、宝石を作ろうとした男がいた。
捕まえたモルフォチョウの羽を切って、
色を取り出そうとしたところ、
たちまちくすんだ茶色になってしまった。

これは、モルフォチョウの羽が、色素ではなく、
光の反射で青色に見えているから。
空や海と同じ、誰にも奪えない色。

2023年06月04日

執筆者櫻井瞭

虫のはなし 「ウイスキーと虫」

6月4日は、虫の日。
ウイスキーが世界に広まったきっかけは、「虫」だった。

19世紀の中頃、「ブドウネアブラムシ」という虫が、
ヨーロッパ全域に発生。
ブドウ畑に甚大な被害をもたらし、ワインの生産量は1/3に。

だが、ヨーロッパの酒好きは、諦めが悪かった。
ワインが無ければ、ウイスキーを飲めばいいじゃない。

ほどなくして、ウイスキーのおいしさが世界に知れ渡る。
虫がきっかけで知ったウイスキーの味は、
無視できなかったようだ。

2023年06月04日

執筆者川田琢磨

Photo by 孫晨哲

虫のはなし 「虫の仲間」

6月4日は、虫の日。

虫という字は、元々、あらゆる生命を意味していた。
たとえば「裸虫」と書けば、それは人間のことだった。

そして、空に架かる虹。
虹という字には虫偏が付くが、
これは龍、つまり生き物と考えられていた頃の名残り。

虹も、人間も、虫の仲間。

2023年06月03日

執筆者廣瀬大

Photo by Elias Ruiz Monserrat

#1

人は本来、さまざまな顔を持っているもの。

ロックバンド「クイーン」のメンバー、ブライアン・メイ。
彼はギタリストという顔と天文物理学者という顔を持つ。

若き頃、アーティストと学者の両方の道を極めるべく活動するが、
バンド活動が忙しくなり一度は学者の道を断念。

しかし、宇宙に対する好奇心は絶えることなく、
30年以上のときを経て研究を再開、論文を発表。
英国のハル大学で名誉理学博士号を74歳で授与された。