2023年04月01日

執筆者廣瀬大

Photo by Ian Macharia on Unsplash

名前の話 #7

アフリカの名前のつけ方は、
地域や宗教、グループによってそれぞれ異なってくる。

ガーナのある地域では、
生まれた曜日と順番が名前に入る。
なので名前を聞くと何曜日に生まれた、
何番目の子なのかがわかる。

ケニアのある地域は
誕生にまつわるできごとを名前に入れる習慣がある。
「早朝」や「誰かが訪ねてきた」といったその日のできごとや、
「難産」といった生まれたときの状況、
「干魃だった年」など、その年の気候を表す名前を持つ人がいるという。

コンゴのある地域では、
生まれた子に名字も自由につけられる。
なので、同じ家族でも違う姓であるケースが多々ある。
また名前の付け方も自由だ。
クリスチャンネームをベースにしつつも、
「神様に感謝します」といった名前や
「ようこそ」といった名前の人がいるという。

西部と、中部アフリカを中心に格言からとった名前も広く見られる。
「火のないところに煙は立たない」
「良き友情は兄弟関係より優る」といった
格言を由来にした名前の人が多くいる。

日本のように縁起をかつぐ名前も各地に色々と見られるが、
こうしてみると、その土地、文化によって、
名前の付け方にも世界にはさまざまな多様性があることがわかる。

2023年03月26日

執筆者市川理香

春のはなし 「4月始まりの手帳」

文房具屋に
4月始まりの手帳が並んでいる。

最初の月が4月ということ以外は
1月始まりの手帳と同じ。
違うのは、窓の外の景色。
そして、いちばんはじめに書く予定。

4月始まりの手帳は
年度の切り替えで手帳を新しくする人のためだけど、
お花見の約束を、最初に書きたいから、
4月始まりの、手書きの手帳を選ぶ。
そんな人が多いとうれしい。

桜の便りが届く頃、
街に吹く風は光って見える。

2023年03月26日

執筆者斎藤剛

春のはなし 「3月の春と4月の春」

見送る春 と 迎える春 がある
迎える春は華やかだが 
見送る春は時間がゆっくり流れていて
その時間ときの中で遥か昔を思い出す
ひと気のない教室
空になったロッカー
きれいに拭かれた黒板
柱の相合い傘

木洩れ陽に照らされたグラウンドのように
記憶が美しくえがき直される

節気せっきとは1年の24分の1
「春分」もそのひとつだが
とても秀逸な演出家である

そろそろ春のセーターの出番だろうか

2023年03月26日

執筆者藤野美奈

Photo by Aurélia Dubois on Unsplash

春のはなし 「卒業とは」

春は、卒業の季節。
この卒業という言葉には、
『別れ』や、『終わり』というイメージがある。

一方、英語でいう卒業は、graduation(グラデュエーション)
その語源はラテン語のgradus(グラデュス)
段階や階段という意味からきている。

卒業は、
次の階段を一歩ずつのぼるということかもしれない。

人生は、長く続く階段のようなもの。
平らな日々が続くことはほとんどなく、
一段乗り越えると
また次の一段があらわれる。

この春、卒業を迎えた人が立つ階段の上からは
今しか見えない景色が見えている。

2023年03月26日

執筆者佐野光宏

春のはなし 「桜鯛」

昔から鯛は縁起の良い魚とされる。

桜の時期に旬を迎える桜鯛は
産卵に備えしっかり栄養を蓄えて
桜色に染まった真鯛の呼び名だ。

谷崎潤一郎の「細雪」には
京都の花見のくだりで鯛の話が出てくる。
妻にいちばん好きな魚をたずねたら
即座に「鯛」という答えが返ってきた。
好きな花はもちろん桜。

花は桜、魚は鯛なのである。

2023年03月26日

執筆者正田伴式

Photo by Takayuki Miki

春のはなし 「さくらびと」

桜の花を眺める人を「桜人」という。

桜のつぼみの紅色は
開花とともにアントシアニンが薄くなり
花びらが白くなる。
散りぎわには
新たなアントシアニンが集まり
中心が赤みを帯びる。

こうして咲き始めから
ひらひらと舞って散るまで
さまざまな景色をみせる。 

うららかな春
桜人になろう。

2023年03月26日

執筆者森下鉱

Photo by Hiroyuki Takeda

春のはなし 「桜の樹の下には」

桜の樹の下には屍体が埋まっている!
梶井基次郎の小説の始まりの一文。
青空の下、満開の桜もきれいだけれど、
真夜中に観る桜はまったく別のもの。

静まり返った公園、狂ったように咲き誇る桜。
確かに屍体さえ栄養にしてしまいそうな
圧倒的生命力を感じる。

梶井基次郎は、さらにこんなことを書いている。

どんな樹の花でも、
いわゆる真っ盛りという状態に達すると、
あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。

2023年03月26日

執筆者横山玲子

春のはなし 「春の来ない庭」

大男の庭には美しい花が咲き、小鳥が歌い、
子どもたちの遊ぶ声が聞こえた。

ある時、その庭に春が来ない。
大男が子どもたちに遊ぶことを禁じたのだ。
庭は雪に閉ざされ、冷たい冬が続いた。
これはオスカー・ワイルドの童話
「わがままな大男」のお話。

物語のなかで、やがて大男の庭に春が来る。
雪が解けて花が咲き
子どもたちがそっと庭に入って遊んでいた。

大男は思った。
子どもが笑っているから春は来るんだ。

どうか、世界中の子どもたちに春が来ますように。

2023年03月26日

執筆者勝野雅光

春のはなし 「春はあけぼの」

「春はあけぼの」と古の人は言った。
日が昇る前、東の空がゆるりゆるりと光を増してゆく。
そのわずかなひと時を眺めたのだろう。

夜明けに帰っていく人を見送ったとき
こんな空があったのだろうか。

千年前も、今も、春の朝の陽ざしは柔らかい。

2023年03月25日

執筆者澁江俊一

100年前の世界へ 『プロ野球』

100年前へ、行ってみよう。

1923年は日本初のプロ野球チーム
「芝浦協会」が本格始動した頃。

当時は大学野球の選手が
国民のスターだった。
しかし人気に溺れた選手の不祥事が続き
芝浦協会の選手には            
プロとしての強さだけでなく、
学力や人格まで求められた。

1年に及ぶ厳しい勉強と練習を行い、
2023年には学生最強の早稲田に勝利。
その直後、関東大震災で芝浦協会は解散する。

史上初のプロだった彼らの努力。
今のスター選手たちには
どう映るだろう。