2023年03月11日

執筆者大友美有紀

Photo by M Murakami

東北にサクラ咲け 「福島・喜多方日中線しだれ桜 」

東北の桜のシーズンは、4月から始まる。
福島・喜多方の、
旧国鉄日中線(にっちゅうせん)跡地の遊歩道には、
約1000本のしだれ桜が咲き誇る。
3キロにもわたる桜のトンネルのような、
壮大なスケールの並木だ。
SLの展示もあり、絶好の撮影スポットになっている。
満開に立ち合いたい。

2023年03月11日

執筆者大友美有紀

東北にサクラ咲け 「山形・伊佐沢の久保桜 」

山形県長井市に、樹齢1200年と言われる、
エドヒガンのしだれ桜がある。
坂上田村麻呂と土地の豪族久保氏の娘の、
悲恋の伝説を伝えるこの桜は
伊佐沢の久保桜と呼ばれている。
国指定天然記念物でもある。

近頃は樹勢が衰え、
幹がふたつに割けてしまったが
二本の桜が寄り添うように見える姿が
いじらしくも思える。

2023年03月11日

執筆者大友美有紀

Photo by Tomofumi Sato

東北にサクラ咲け 「宮城・白石川堤一目千本桜(しろいしがわづつみひとめせんぼんさくら)

宮城県・蔵王連峰の麓を流れる白石川に、
「一目千本桜」と呼ばれる桜並木がある。
一目で千本の桜が見渡せるかのよう。
全長約8キロの堤に、ソメイヨシノを中心に
1200本あまりの桜が咲いている。
白石川の水の青、果てない桜並木、
そして背景には雪の残る蔵王連峰。
スケールの大きな三層の色の景観に、
出会えるまで、あとひと月。

2023年03月11日

執筆者大友美有紀

東北にサクラ咲け 「宮城・西行戻しの松公園の桜」

日本三景のひとつ、宮城県松島にも
桜の名所がある。
西行戻しの松公園の桜。

西行は諸国行脚の折、ここの松の木の下で
山王権現の化身である童子との禅問答に敗れ、
松島行きを諦めたといういわれがある。
園内には約260本のソメイヨシノが咲く。

展望台から、桜並木ごしに松島湾が望める。
晴れた日には、うすべに色の桜と海の青の
美しいコントラストを楽しむことができる。

2023年03月11日

執筆者大友美有紀

Photo by annintofu

東北にサクラ咲け 「岩手・北上展勝地(きたかみてんしょうち)

みちのく三大桜名所のひとつ、
岩手県の北上展勝地は
北上川沿いの公園で、
橋を渡って園内に入ると、
およそ2キロも続く桜並木が出迎えてくれる。

293ヘクタールの園地には
約150種、1万本もの桜があるという。
4月中旬ごろにソメイヨシノが咲き始め、
オオヤマザクラ、マメザクラ、
エドヒガンなどが次々と咲き、
5月上旬のカスミザクラまで、続く。
まるで桜の交響曲だ。

2023年03月11日

執筆者大友美有紀

東北にサクラ咲け 「青森・弘前公園、芦野公園」

東北の桜の最後を飾るのは、青森だ。
青森の桜は4月下旬から5月上旬にかけて咲く。

有名な弘前公園には
しだれ桜、八重桜など
約52種およそ2600本の桜がある。
1882年に寄贈されたソメイヨシノも現存している。
従来、桜の寿命は60年から80年。
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と言われるように、
桜は剪定すると切り口から病気が入りやすくなる。
けれども弘前ではリンゴ栽培にヒントを得て、
弱った枝を切り、根元に肥料を入れ、
切り口に薬剤を塗る方法で、樹勢を回復させている。
これを「弘前方式」と呼び、
剪定方法を学ぶ人が、全国の桜の名所から訪れる。

弘前公園の桜は、散った後も美しい。
花びらが濠の水面を埋めつくす、花筏だ。
水面(みなも)も頭上も桜色、この場所でだけ、
この瞬間だけ楽しめる絶景だ。

青森・津軽地方の芦野公園も
約1500本の桜が咲く名所だ。
公園の一部を横切って津軽鉄道が通っている。
トンネルのように咲く桜の下を
2両編成のローカル列車が走る姿は、
可愛らしい。

東北にサクラ咲く。その日を待ちわびている。

2023年03月05日

執筆者佐藤延夫

Photo by autan

春の色 「菫色」

日本には、60種類以上の菫が自生している。

山振のやまぶきの 咲きたる野辺のさきたるのへの つぼ菫つぼすみれ この春の雨にこのはるのあめに 盛りなりけりさかりなりけり

古くは万葉集にも登場する菫だが、
色の種類として「菫色」という言葉が一般的になったのは、
明治時代になってから。
「ヴァイオレット」の訳語として使われたのが始まりだそうだ。

白やピンクの菫もあるが
菫色はやっぱりあの色だ。

2023年03月05日

執筆者佐藤延夫

Photo by Satoshi A

春の色 「若草色」

厳しい冬を耐え、
早春に芽吹く若草のの鮮やかな色。
若草色は日本に古くから見られる伝統的な色だ。
平安時代、
貴族たちが身につけた装束の重ね、
着物の組み合わせの色合いに由来する。

うら若き 寝よげに見ゆる 若草を ひとの結ばんことをしぞ思ふ

伊勢物語には
初々しい女性の姿を、若草にたとえた歌もある。

もうすぐ春。若草色に会える季節へ。

2023年03月05日

執筆者佐藤延夫

Photo by TANAKA Juuyoh (田中十洋)

春の色 「紅梅色」

冬の終わりに咲く花。
梅には、春告草はるつげぐさという別名がある。
奈良時代、あるいはそれ以前に渡来したといわれる白梅しらうめ
香りがもてはやされ、
一方、平安時代に伝わったとされる紅梅こうばい
美しい色合いで人々を魅了した。

紅梅の色をたとえると、
やや紫色を含んだ淡い紅色。
平安時代には、貴族の女性たちに好まれ、
装束の色としても人気が高かった。

木の花は、濃きも淡きも紅梅

枕草子の中で清少納言も
紅梅の美しさを褒め称えている。

思えば、令和という元号も、
出典は万葉集にある梅の歌だった。

初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす
(しょしゅんのれいげつにして、きよくかぜやわらぎ、うめはきょうぜんのこをひらき、らんは はいごのこうをかおらす)

日本人の心に、梅の花が咲いている。

2023年03月05日

執筆者佐藤延夫

Photo by Naoki Natsume/Ishii

春の色 「花葉色」

花葉はなば色。
それは本来、織色おりいろの名前だった。
織色とは、色の違う縦糸と横糸で織ることにより
生じる色合いのこと。
縦糸は、黄色。
横糸は、山吹色。
この二つを組み合わせると、
春らしい柔らかな色、花葉色になる。

花葉の由来は、菜の花の花弁。
平安時代の皇族や貴族の装束でも、
春先だけに着る色と決められていた。

軽やかに、春の色と歩きたい。