恋するモノローグ
ストーリー 黒須美彦
出演 瀬川亮 内田慈
「きっもちいいねー」
「あ、そうだね」
「走ろう」
「え、ああ」
k 今日は、柏木さつきと
二回目のデートだ。
デートと呼ぶにはうぶな代物かも知れないが
「あ、月がでてるよ。昼間なのに」
「ああ、そうなんだ、
白夜月は、
月齢にもよるんだけど、
特に冬、上限の月だとよく見える」
「ふーん」
「いま、暦の上では立春だけど、
まだまだ寒いから…」
「戸田君、詳しいんだね、天気のこととか…」
k あー、なんかつまんない話してるな、俺…
いつも、こうだ。とりとめくて、雲や星の話ばっかりして、
まあ、天文部の部長なんだけどね…
s ねえ、
k ん?
s ねえ、君、いま、つまんない話してるな、俺、
って思ってたでしょ?
k 誰?なに?
s 柏木さつきのココロの声、モノローグね
k ココロの声って
s ええ、君が戸田浩一郎のココロの声なのと、おんなじこと。
でも、たしかに、退屈だよね。
k え、それって、なに、会話できちゃうわけ、僕たち
s ま、そうなんじゃないの、一種のテレパシーみたいなこと?
k それって、すごくない、
s うーん、そうかな、現にこうやって話しているわけだし、
そんなことより、君はどう思うわけ?
k どうって
s この、じれったい感じよ
k ま、でもしかたないんじゃないの、悪気はないんだし
s 悪気とかじゃなくって、リビドーないの?
k リビドー?
s 性的衝動
k そりゃまた、ずいぶん、いきなり
ものには順番てのがありまして?
s なに、じいさんみたいなこと言ってんのよ
さつきのキモチになってみればね…
k あれ?さつきのキモチって、
君はココロの声だから、
キモチそのものなわけじゃない、
まそれは、話がこんがらがるから、おいといて、
s うん、そうしといてくれる。
つまり、戸田君が、どんだけ強く、
さつきを思ってるかってこと。
k ああ、好きだよ。彼、ていうか俺、
病的なくらいにね。毎朝四時に、
さつきが好きだって、
きゅんと胸が締めつけられて、
起きたりしているし
s そこまで。それを押し殺しちゃってるんだね。
k そうなんだ。
s あー、でも、いま地動説に行っちゃったよ、はなし
せめて音楽とかの話題ないの?
k そっちもわりとマニアックなんだ
s たとえば?
k ベル&セバスチャンとか、
s あ、ベルセバなら、さつきも大好き
k なんだ、じゃ、ちょっと待ってて、
話題変更を命令中枢に指示するから
ベ、ル、セ、バ…、
最近のアルバムの話でいいか…
s ね、キスしてよ
k ん?
s キス、しよ
k キスって、僕たちココロの声だよ
まだ本人達もしてないのに?
s だから、ココロでするのよ
k どうやって
s してみて
k あ、こ、こうかな
s ちょっと違う
k じゃ、こう
s …
k …
s なんとなく、そんな感じかも
k 実感ないけどね
s でも、なんか、いい感じかも、
k 余韻があるね…
s あ!
「あ、バイトの時間だ、あたし行かなくちゃ」
「あ、もう、そんな時間か」
「でも、楽しかったよ、握手」
「うん」
k 本人達より先越しちゃったけど
s 続きが楽しみだね
k じゃ
s また
出演者情報:瀬川亮・内田慈 30-6416-9903 吉住モータース所属
動画制作:庄司輝秋