東北に行こう

tohoku

目をあけるとそこには夏が



目をあけるとそこには夏が

         ストーリー 加藤晶(東北芸術工科大学)
            出演 大川泰樹

目をあけると、そこには夏がありました。
私はそれを電車の窓から見つけました。

太陽は田んぼに張られた水や山々の木々、
そこにある様々なものを輝かせています。
緑も白も黄色もすべて、
平等にきらきらとしています。
吹く風には明るい色がついているようです。

まだ小さい私はうとうとと眠ってしまったようでした。
隣には父と母がいて、ふたりは小さな声で会話をしています。
懐かしさなんてまだ覚えるはずのない私でも
懐かしいと感じてしまうような、
暖かくて良いにおいのするふたりの姿です。

私は電車でこれから運ばれてゆく場所を、想像します。
私が生まれるずっと前からある美しい風景や自然、
季節、動物たちが浮かびます。
それは、たくさんの人が生活を営みながら、
ずっと守ってきたものです。ゆるやかにつづいてきたものたち。
そこは今日のように夏はからりと暑く、
冬は雪がたっぷりと積もるのでしょう。
春は新しい生きものたちがざわめき、
秋にはたっぷりとした実りがあるのでしょう。

尊いということがどういうものなのか、
私にはまだよくわかりません。
でも美しいものがそこにあり、
生きつづけているというのは
きっと尊いことなのでしょう。
そこをこれから私がたずねるのも、
きっと一つの奇跡のかたちなのです。

まだ少し眠く、私は目を閉じます。
電車のゆっくりとした心地よい揺れを感じながら、
私はこれから見る景色を想い、夢に見ます。

東北に行こう。

● 日本の車窓から・東北
 http://www.tsubamenet.com/area09touhoku/index.html

● 車窓で旅する日本列島
 陸羽東線:http://www.toretabi.jp/travel/vol01/01.html
 只見線:http://www.toretabi.jp/travel/vol13/01.html
 磐越東線:http://www.toretabi.jp/travel/vol07/01.html


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つながり



つながり

           ストーリー 高野拓也
              出演 地曳豪

東北には、人と人との熱い繋がりが有る。

東北は今、東日本大震災によって、甚大な被害を受けている。
中でも、観光地の風評による被害は大きい。
観光地として機能できなくなってしまった土地もある。
こんな状況を、東北の中で間近に感じた私は、
きっと観光地では諦めのムードが漂っているだろうと思っていた。

震災から2ヶ月ほど過ぎたころに、
ある温泉街に旅行に行った時のこと、
旅館のエントランスで女将さんと旅行代理店の人が
話をしているのが耳にはいった。
震災の被害に関する話のようだった。
女将さんが言うには、やはり被害は大きいようで、
観光地から東北を明るくしようと手を打ってはいるが、
なかなか風評の影響には勝てず、嘆くばかりだそうだ。

明らかに重苦しい空気が流れていた。
しかし、次に旅行代理店の人が言った言葉は、
なにかそんないやな空気を吹き飛ばしてくれるようだった。

「この温泉街のためにも、東北の方々の元気のためにも、
次に来るときには、必ずや、沢山お客様を連れて帰ってきます!」

熱い思いを感じた。
この温泉街に来てよかったと思った。
なぜか幸せな気持ちになった。
もっといろんな観光地へ行きたいと思った。

きっと東北の各地にはこんな人と人との繋がりが溢れている。

人と繋がろう。東北へ行こう。

● 東北観光復興ポータルサイトhttp://www.tohokukanko-fukkou.jp/

● 東北シティhttp://touhokucity.org/


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夏のバラ



夏のバラ

         ストーリー 今野絵里菜(東北芸術工科大学)
            出演 長野里美

じりじりと太陽が照りつける夏。
秋田県には色とりどりのビーチパラソルが出没します。
そこは砂浜ではなく、車がたくさん通る国道です。
そのパラソルを見つけると車は速度をゆるめ、
近くにゆっくり停車します。

パラソルのなかには、
ほっかむりに長袖シャツの、
農家のようなかっこうをしたおばあさんがひとり座っています。
ほっかむりの落とす影から顔をうかがうと、
そこには秋田美人の面影があります。

おばあさんはゆっくり立ち上がり、
前に置いてあるドラム缶のふたをおもむろに開けます。
頬をなでる冷気に気を取られているあいだに、
あなたはふと目の前にバラの花が咲いているのに気づくでしょう。

それは甘くて冷たいバラの花。
秋田の人たちなら一度は食べたことのある、ババヘラアイスです。
金属のヘラを使い、おばあさんはコーンの上に
器用に黄色とピンクのシャーベット状のアイスをのせていきます。
それをバラの形にするのには、熟練した技術が必要なのです。

いつどこで会えるかわからない、夏限定のバラの花です。

● 秋田ファンドットコムhttp://www.akitafan.com/

● ババヘラアイス進藤冷菓http://www2.babahera.net/

● ババヘラアイス児玉冷菓http://www.kodama.in.arena.ne.jp/

● ババヘラアイス杉重冷菓http://www.namahage.ne.jp/~parasolice/


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会津磐梯山



会津磐梯山
           ストーリー 赤間文佳(東北芸術工科大学)
              出演 水下きよし

会津磐梯山。そこは空が住む山である。
磐梯という字は、元は『いわはし』と読み、
『天に掛かる岩の梯子』という意味だ。
福島県の真ん中にぽっかりと穴が空いているように見える場所がある。
その穴の正体は日本第4位の広さを誇る猪苗代湖だ。
その湖の北に位置する場所に天への梯子・磐梯山がある。

磐梯山には表と裏があり、どちらからも登ることが出来る。
だが、それは光と陰、水や火などのように表裏の表情が全く違う。
表磐梯は整った稜線で形成されているが、
裏磐梯は荒々しい姿を見せる。
これは明治21 年7 月に会津磐梯山の噴火によって裏磐梯が生まれ、
その雄々しくも見える山並みを形成したからだ。

噴火した当時、植物は死に絶え、荒れ果てた大地が広がった。
しかし、噴火から百十数年の時の中で、裏磐梯の植物は甦った。
春から夏にかけてはニッコウキスゲの花で黄色に染まり、
秋はエゾリンドウで青く、そして紅葉で赤くも染まる。
そして噴火が生んだ恵みはこれだけでは無い。
五色沼と呼ばれる十数個の湖沼群を誕生させた。
この沼たちは流入している火山性の水質の影響で
四季の彩りに加えて、
日々の時間によっても自分たちの色を変えるのだ。

その彩りの中、天への長い梯子を登ったとき、
私たちは空の世界へと導かれる。
登っていくなか、いつの間にか雲は私たちの下にある。
視界には雲の海とどこまでも続く青の世界が広がっている。

会津磐梯山。
そこは自然の彩られた世界と空の世界が繋がる山なのだ。

● 会津磐梯山ツーリズムガイドのHP
http://inawashiroko.cocolog-nifty.com/chikara/

● 会津・米沢 千の旅回廊http://1000tabi.jp/index.php

● 極上の会津http://www.aizu-furusato.com/gokujo/

● 猪苗代観光協会http://www.bandaisan.or.jp/index.php


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拝啓 千田夏美さま



拝啓 千田夏美さま  

        ストーリー 菊池神楽(東北芸術工科大学)
           出演 瀬川亮

拝啓 千田夏美さま

日増しに暑くなってきたね。
じわじわ体の表面が焼かれて溶けそう。
関東は39 度を観測したとこの間ニュースで見ました。
今日は夏の匂いがとても濃くて、
去年二人で岩手へ帰る途中に寄った松島を思い出して手紙を書きました。

あのときも、ものすごく暑かった。
仙台駅で待ち合わせて
最初はただ帰省するタイミングを合わせるだけの約束だったのに
電車の中からきらきらひかる海が見えたら
ぐわーって 足のつま先から頭のてっぺんまで
どきどきが湧きあがって止まらなくって
二人同時に「海!」」って言って
顔を見合わせて なんにも言わずに松島駅に降りた。

その流れが鮮やかすぎて
しばらく会ってなかったけどお互い変わってないなあって思って
嬉しかったよ。

駅からタクシーで、遊覧船のところまで行ったら
ちょうど船が出るところで早足で乗り込んだ。
ウミネコをよそにかっぱえびせんを食べる私と
それを見て笑う夏美
船内は日本三景の海に浮かぶ島たちのアナウンス
ちょっと大人になったから今度こそちゃんと聞こうと思っていたのに
話すのに夢中になって島の説明あんまり聞けなかったね。

二度目の修学旅行、ほんとにたのしかった!
今年の夏もふたりでぶらっとどこか行こう。

● 松島観光協会http://www.matsushima-kanko.com/

● 松島温泉組合http://www.matsushima-onsen.com/


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グリーンフラッシュ



グリーンフラッシュ
            文:伊藤眸(東北芸術工科大学)
            声:西尾まり

秋田から新潟へ帰る特急列車のなか、
思わず窓を覗き込んでしまいました。
あつみ温泉駅をすぎたあたり、
右側に夕日が沈む日本海がみえたときでした。

グリーンフラッシュという現象を知っているでしょうか。
太陽が完全に沈む直前、
水平線に緑の光が一瞬光る、という現象です。

色の波長が中くらいの緑色だけが光る自然現象は非常にまれで、
見ることは奇跡に近いと言われています。
それは、「緑色の奇跡の閃光」とも呼ばれており、その稀さから、
「見ることができた人は幸せになれる」という伝説があります。

あつみ温泉は
空気が澄んでいてチリなどが少ない場所でしか見ることのできない
グリーンフラッシュを
運が良ければ見ることができるそうです。
そのことを思い出しながら
列車の窓から日本海に沈んでいく夕陽をずっと見つめていました。

秋田での思い出や、においや、少しさみしい気持ちが
わあっとあふれてくるような感覚を、今でも覚えています。

時間は静かにゆっくりと流れていきました。
東北は帰り道まで私たちの心を癒してくれます。
もう一度、奇跡をみに東北を旅してみようと思います。

● 羽越本線きらきらうえつhttp://www.kirakirauetsu.jp/index.html

● あつみ観光協会http://www.atsumi-spa.or.jp/index.html

● やまがたへの旅http://www.yamagatakanko.com/


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