2009 年 5 月 17 日 のアーカイブ

中村直史 09年5月17日放送

1  

ブータン国王

王様は考えた。

みんなが
ただお金持ちになれば
幸せなのだろうかと。

そして言った。

我が国は、お金持ちになるためでなく
人として幸せに暮らしていくための
場所になろう。

そして人々は
自然を守り、家族を大切にし、
楽しく暮らしましたとさ。

昔話?
いえいえ、いまの話です。

第4代ブータン国王
ジグメ・シンゲ・ワンチュクは
国民総生産に代わる国家の指標として、
「国民総幸福度」を提唱。

彼が国民に投げかけた言葉は
世界への問いかけでもある。

あなたは、いま、幸せですか?






4

古今亭志ん生

貧乏を語らせれば、
右に出るものはいなかった。
それもそのはず、
なめくじの這うような
貧乏暮らしをした。

酔っぱらいを描かせれば天下一品。
それもそのはず、
大の酒のみ。
いや、のまれた方か。

稀代の落語家、
5代目古今亭志ん生(ここんてい しんしょう)。

ある日の志ん生、
酔っぱらったまま高座に上がり
噺の途中で寝てしまった。

ざわつく客席から声が飛ぶ。

まあ、寝かしといてやろうじゃねえか。

そこにいるだけで芸になる。
そんな落語家だった。

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マハトマ・ガンジー

この世を去る時には、
親しい者たちへ
お別れの言葉を残したい。

けれど死は、
そんな余裕を与えてはくれない。

生涯暴力を否定しつづけた
マハトマ・ガンジー。

彼は死の瞬間、
目の前の暗殺者に対し、
自らの額に手をあてて
見せるのがやっとだった。

その意味は、
あなたを許す。

許されたほうの男に
その後どんな
気持ちの変化があったのか。

その記録は見当たらない。

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エリック・サティ

とあるサロンでの演奏会。
聴衆に向かって、その作曲家は言った。

これから演奏する音楽を、どうかお聴きにならないでください。

フランスの作曲家、エリック・サティ。

威張ったり
自慢をすることが大嫌い。
目指した音楽は「気づかれない音楽」だった。

ヘンな人だ、と人々は言った。
けれど彼は、
やさしすぎるあまり、
ヘンに見えたのかもしれない。

その証拠にほら・・・
やさしい音でしょう?

サティの誕生日を記念して、
今日をやさしい一日にしませんか。

6

草野心平

るるり。
りりり。

あなたはわたしどもの生きざまを
ポエムという形で表現してくださいました。

るるり。
りりり。

その表現は、なかなかどうして
わたしども蛙の気持ちをするどくとらえており、
あなたのご先祖はもしや
わたしどもの一族では、と思うほどでした。

るるり。

わたしども蛙の偉大なる詩人、
草野心平さま。

ときおり田んぼで
話しかけてくる子どもは、
きっとあなたの影響でしょう。

あ、青大将が舌を出しながら
こちらを睨んでおりますので、
この辺で失礼します。

親愛なる、草野心平さまへ。
蛙より。

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尾崎放哉

さみしあったかい。
そういう感情も、
人間にはあるらしい。

犬よちぎれるほど尾をふつてくれる

こんなよい月をひとりで見ている

夫婦でくしゃみして笑った

尾崎放哉(おざき ほうさい)。

五七五の枠に
収まりきらない孤独を
見つめつづけた。

小豆島に行くと彼のお墓がある。

手書きで「放哉さんのお墓」と書いてある。

さみしあったかい
たたずまいで立っている。

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リンドバーグ

夢を実現する
第一のルールは、
「そんなのできっこない」
と言わないことだ。

いまから82年前の5月。
人類初の大西洋無着陸横断に成功した、
チャールズ・リンドバーグ。

命をかけた冒険で
知られる彼が
命を救う発明を
行っていたことは
あまり知られていない。

重篤な病気を持つ親類を
助けるために考え出された
世界初の人工心臓。

真っ暗な暗闇の中を飛び続けるような、
厳しく、苦しいプロセスを乗り越えての
発明だった。

あなたが思い描く夢は何だ。

「そんなのできっこない」
なんて言ってる暇はないぞと
リンドバーグが
空の上から言っている。






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ジョージ・ガーシュウィン

天才といえども、
進むべき道が見えなかったのだろう。

あなたのもとで作曲を学ばせてください。

若きジョージ・ガーシュウィンは、
オーケストレーションの魔術師と言われた
モーリス・ラヴェルに教えを乞うた。

ラヴェルは断った。
いじわる、ではない。

ガーシュウィンの才能を見抜いていた。


私のもとで二流のラヴェルとなるより、
あなたは一流のガーシュウィンでありつづけなさい。

その教えを、
ガーシュウィンは守りつづけた。

こんな風に。

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