2009 年 8 月 16 日 のアーカイブ

番組制作奮闘記-5


自由が不自由になるとき。(八木田杏子)

細田が自由に戸惑っているころ、
私は不自由に戸惑っていました。

「コンビニ」というテーマを発見して、あんなに盛り上がったのに・・・・。
それが、窮屈な制約になってしまったのです。

最初は、地平線まで広がる砂漠のようなキャンパスに、
自由に絵を描いていました。
砂場でしか遊んだことのない子供が、
砂浜で大きな創造物に挑戦するように。
夢中になって、手探りで、砂をかいていました。

それなのに。
「コンビニ」というテーマができた途端、
砂浜が砂場になってしまったのです。

コンビニ商品を題材にして・・・・
コンビニにいる時の気持ちを描いて・・・
棚の前でこんな行動をとったりして・・・

だんだん発想が小さくなって、
どんどん細かい描写に拘るようになりました。

そんな原稿に、
J-waveの久保野さんと厚焼玉子さんから、厳しいひと言。

「商品に縛られ、自由を失っています。」

さらに、優しいひと言。

「最初の原稿のほうが、心を打ちました。」

そして、有り難いひと言。

「かき氷から、アラスカに飛んでもいいんですよ。」

コンビニは発想の起点でしかなく、
そこから世界中に飛べるし、過去や未来に行くこともできる。

自由な砂浜を、不自由な砂場にしていたのは、私自身でした。

そこから抜け出して、どこまで遠くへ行けたのか。
結局、すぐ近くで息絶えたのか。

今日の25時から、それが分かってしまいます。

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小山佳奈 09年8月16日放送

アンリ・デグランジュ


8月16日に亡くなった人 ~ アンリ・デグランジュ

歴史の始まりはたいてい
腰が抜けるほど単純なものだ。

 「自転車レースの日は新聞がよく売れる。
 だったらレースの方をつくろう。」

スポーツ紙ロトの編集者、
アンリ・デグランジュが
売上げアップのために始めたレース。

それが今では世界一有名な自転車レース
「ツール・ド・フランス」となった。

動機はあくまで
単純な方がいい。

今日、8月16日は、
アンリ・デグランジュの亡くなった日。

震洋特攻隊


8月16日に亡くなった人 ~ 震洋特攻隊

ベニヤ板を接着剤で貼り合わせただけの
おもちゃのようなモーターボートを集めて
どこかの見知らぬ大人たちが「特攻隊」と呼んだ。
乗組員は人間ひとりと、爆薬250キロ。

1945年8月16日。
戦争が終わったはずの翌日に、
初めて出撃の命令が下る。

準備中、一つの船が爆発して、
111人の若者が、こっぱみじんになった。

震洋特別攻撃隊、手結基地。
東京から遠く離れた高知の海辺の小さな村で、
誰も戦争が終わったなんて教えてくれなかった。

 「国のために死ぬ覚悟はできていた。
 しかし犬死をする覚悟なんて持っているわけがない。」

生き残った男の目には今もはっきりと
真っ赤に染まる海が見える。

人間が始めた戦争なのに
人間はそれをうまく終わらせることができない。

なのにまた世界のどこかで
今にも始めようとしたりしてる。

どうして人間はそんなにも。
どうして人間はこんなにも。

090816-elvis2


8月16日に亡くなった人 ~ エルヴィス・プレスリー

メンフィスの小さなレコーディングスタジオに
ふらりとやって来た白人の若者。
高校を卒業しトラックの運転手をしているという18歳は、
聞けば母親の誕生日に歌を贈りたいという。

黒人初の大統領が生まれるたった50年前のアメリカでは、
人種の壁ははるかに高く、
それは音楽ですら例外ではない。
黒人はブルース。
白人はカントリー。

オーナーのサム・フィリップスが
どんな歌を歌えるのかとたずねるとこう答えた。

 「僕は何でも歌えます。
僕は誰にも似ていません。」

彼の名は、
エルヴィス・プレスリー。

何かに例えようとする時点で、
それはもうロックではない。

そもそもロックなんてジャンル自体、
ロックの神様には失礼な話。

今日、8月16日は、
エルヴィス・プレスリーの
亡くなった日。

佐伯祐三


8月16日に亡くなった人 ~ 佐伯祐三

1923年。
西洋画の聖地、
パリに渡った佐伯祐三は、
狂ったように絵を描いた。

その狂気は、
画壇を鮮やかに彩るかわりに、
彼自身の心と体を黒く黒く塗りつぶしていく。

 「きっと俺はやりぬく 
 やりぬかねばおくものか
 死-病-仕事-愛-生活」

何よりも死が一番近く、
だからこそ必死で生きた。

今日、8月16日は、
佐伯祐三の亡くなった日。

ベラ・ルゴシ


8月16日に亡くなった人 ~ ベラ・ルゴシ

黒いマントと燕尾服。
オールバックに白い牙。

「魔人ドラキュラ」で一躍スターとなったベラ・ルゴシは、
その後、自ら作り上げたドラキュラ像から逃れられず、
B級俳優の烙印を押される。

彼は亡くなる直前こう言い残す。

 「埋葬するときには
 黒いマントを着せてほしい。」

最後までドラキュラでありつづけようとした彼が、
B級であるはずはない。

今日、8月16日は
ベラ・ルゴシの亡くなった日。

マーガレット・ミッチェル


8月16日に亡くなった人 ~ マーガレット・ミッチェル

自分を書くことはひどく勇気がいる。
偽善的にも偽悪的にもすぐなり下がるから。

作家、マーガレット・ミッチェルはその点、
正直すぎるほど正直に自分の人生を書いた。

「風と共に去りぬ」の主人公スカーレットは、
彼女そのもの。

結婚した男は粗暴で不埒で魅力的。
それでも昔の恋が忘れられずに傷つき別れる。

 「Tomorrow is anotherday.」

それはきっと彼女が
自分自身に言い聞かせ続けた言葉。

今日、8月16日は、
マーガレット・ミッチェルの
亡くなった日。

セルマン・ワクスマン


8月16日に亡くなった人 ~ セルマン・ワクスマン

正岡子規からショパンまで
世界中の才能を奪い続けた死の病、結核。

その特効薬を発見しノーベル賞を受賞した、
セルマン・ワクスマン。

しかし実際にこの抗生物質を発見したのは
彼の研究室にいた23歳の研究生だった。

部下の栄誉を横取りした非道な上司とみるか。
部下に資金と機会を与えた偉大な上司とみるか。

今日、8月16日は、
ワクスマンの亡くなった日。

送り火


8月16日の送り火

盆地を囲む五つの文字が
京都の空を赤く燃やす。

今夜、京都では
亡くなった人を偲ぶ、
大文字五山送り火が行われている。

今日、8月16日に亡くなった、
プレスリー、ミッチェル、佐伯祐三。

あぁ。
あなたたちの残したもののおかげで
こんなにも私たちは
泣いたり笑ったり驚いたりできます。

「人を思う」と書いて
「偲ぶ」。

さて、
あなたは今日、
誰を思いますか。

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