蛭田瑞穂 12年10月13日放送
食べる作家②林芙美子
昭和5年に『放浪記』でデビューし、
一躍時代の寵児となった林芙美子。
芙美子はその翌年憧れのフランスに渡った。
パリに下宿を借りた芙美子は、
映画やオペラに通い、美術館を巡り、
花の都の生活を満喫した。
しかし、ただひとつ報われなかったのは
日本食への思いだった。
半年間の滞在を終えた芙美子は船で神戸に着くと、
すぐに港の近くの小さなうどん屋に行き、
葱を振りかけた熱いうどんを食べた。
天にものぼるやうにおいしい。
たつた六銭だつたのに吃驚してしまった。
うどんの味を芙美子は日記にそう記している。