鉄のマーガレット サッチャー 1
イギリス東部、グランサム。
その町の食料雑貨店に女の子が生まれた。
家の家訓は、
質素倹約。自己責任。自助努力。
父から受け継いだ精神は
少女のなかに、骨のある強い人間性を築いていった。
9歳のとき、学校で表彰された際に
少女はこんな言葉で主張した。
ラッキーだったんじゃないわ。
私はそれにふさわしかったのよ。
少女、マーガレット・ロバーツ
のちにイギリス初の女性首相、
マーガレット・サッチャーになる。
鉄の女になる。
鉄のマーガレット サッチャー 1
イギリス東部、グランサム。
その町の食料雑貨店に女の子が生まれた。
家の家訓は、
質素倹約。自己責任。自助努力。
父から受け継いだ精神は
少女のなかに、骨のある強い人間性を築いていった。
9歳のとき、学校で表彰された際に
少女はこんな言葉で主張した。
ラッキーだったんじゃないわ。
私はそれにふさわしかったのよ。
少女、マーガレット・ロバーツ
のちにイギリス初の女性首相、
マーガレット・サッチャーになる。
鉄の女になる。
鉄のマーガレット サッチャー 2
彼女は
オックスフォード大学で化学を専攻し、
食品メーカーに就職した。
そこで携わったのは、
アイスクリームをなめらかにする研究。
やがて鉄の女とよばれるマーガレットが
アイスクリームをこねていた。
一方で、大学時代から経済学に触発され、
保守党協会で活動を開始した。
1950年から総選挙出馬し、2回連続落選。
結婚、出産をはさんで、
やっと初当選できたのは9年後の1959年だった。
そこからだ。
女性のキャリアの障壁となる不当な
“ガラスの天井”を
鉄の女はつぎつぎと破っていった。
rahuldlucca
鉄のマーガレット サッチャー 3
かつて冷たい世界戦争があった。
マーガレット・サッチャーは議会で
ソ連を痛烈に批判する演説をした。
ロシア人は世界征服に夢中。
歴史上最強の帝国になろうとしている。
その演説のあとで
鉄の女
と、あだ名をつけたのは
ソ連の軍事新聞「赤い星」だった。
鉄の女
そう呼ばれることを彼女自身も気に入っていた。
ある時、
サッチャーは真っ赤なイブニングドレス姿で現れ、
こうスピーチした。
この日のために
“赤い星”のドレスを用意してきました。
メイクもパーマもやわらかく仕上げてみました。
私こそ西洋諸国の
鉄の女です。
その姿は、自由を守ろうとする
真っ赤に燃える鉄の女だった。
鉄のマーガレット サッチャー 5
アルゼンチン軍の戦闘機から
ミサイルが発射された。
1982年、南大西洋、フォークランド紛争。
ミサイルはイギリス軍の駆逐艦シェフィールドに
見事命中。撃沈した。
イギリス首相マーガレット・サッチャーは怒り、
フランス大統領ミッテランに食ってかかった。
敵のミサイルも戦闘機も
全部フランス製じゃないの!
そしてミサイルを無能力化する秘密コードを
渡すよう迫った。
あなたが渡さないのなら
南太平洋に配置した原子力潜水艦から
アルゼンチンを核攻撃する。
と脅したという。
じゃじゃ馬のイギリス女め。
ミッテランはそう思いつつも、
コードを引き渡さざるを得なかった。
2カ月間の戦闘ののち、
イギリス軍は勝利した。
ミッテランはつねづねこう語った。
サッチャーは、
暴君カリギュラの眼と、
マリリン・モンローの口を持っている。
鉄のマーガレット サッチャー 6
戦後、イギリスには
子どもたちの給食に出るミルクを
無償配布する制度があった。
当時、教育科学大臣として
予算削減に取り組んでいたサッチャーは
この制度を大幅に縮小した。
マスコミや野党はこの決定に猛抗議し、
「ミルク泥棒サッチャー」と
こきおろした。
映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
の冒頭シーンで、
引退後のサッチャーが、
ミルクを買いに行くシーンがある。
メリル・ストリープ演じるサッチャーは、
ミルクの値段が高いので
小さなサイズにした。
これは「ミルク泥棒サッチャー」への
映画的皮肉。
鉄のマーガレット サッチャー 7
映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』で
アカデミー主演女優賞を受賞したメリル・ストリープは、
サッチャーの死に際し、
こう追悼の意を表している。
彼女は
素晴らしい父親の娘という立場や
実力者の未亡人という立場を利用することなく、
まさに自分自身の努力だけで成し遂げたのです。
全世界の女性や少女たちに
ただプリンセスになるという夢ではなく、
別の夢を与えてくれたのです。
国を導く元首になるという現実の選択肢を。
このことは革新的であり、称賛に値するものです。
BBC Radio 4
鉄のマーガレット サッチャー 8
イギリスで最新の世論調査が行われた。
マーガレット・サッチャーを
良い首相だった と答えた人 46%
悪い首相だった と答えた人 35%
彼女が87歳で亡くなった後も、
ロンドンでは抗議集会が開かれた。
厳しい批判や罵声があがった。
その人たちに
サッチャーが首相となった総選挙後に行った
34年前のこの演説は
いまどう聞こえるだろう。
不一致があれば、私たちは調和をもたらしたい。
誤りがあれば、私たちは真実をもたらしたい。
疑問があれば、私たちは信頼をもたらしたい。
絶望があれば、私たちは希望をもたらしたい。
人類は進歩しているのか。はたして。
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