2013 年 12 月 7 日 のアーカイブ

佐藤延夫 13年12月7日放送



さようなら 橋本武

伝説の国語教師と言われた橋本武さんが、
今年の9月に亡くなった。

中勘助の小説「銀の匙」。
中学3年間でこの1冊だけを読み上げるという
奇抜な授業は、世の教育者を驚かせた。
単語ひとつひとつにヒントがあるから、
どんどん横道に逸れて結構。
子供たちに、自ら掘り下げて学ぶことの大切さを教えた。

そんな彼の言葉。
「すぐ役に立つことは、すぐに役立たなくなります。」

大人なると、よくわかる。
すぐに役立たなくなるものが、あまりにも多いことに。

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佐藤延夫 13年12月7日放送


julajp
さようなら なだいなだ

作家で精神科医の なだいなださんが、
今年の6月に亡くなった。
ユーモアと反骨精神を愛した人で、
晩年には、老人党というインターネット上の
ヴァーチャル政党まで作っていた。

そんな彼の言葉。
「なまけものは哲学を持っているが、
 働いてばかりいる人間には、哲学がない」

もちろん「なだいなだ」はペンネーム。
スペイン語の“nada y nada”
それは、「なにもなくて、なにもない」という意味。

なださんは最後まで、なまけものの哲学を大切にしていた。

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佐藤延夫 13年12月7日放送


Cross Duck
さようなら 山崎豊子

私の作品は、取材が命。
そう語ったのは、今年の9月に亡くなった、
小説家の山崎豊子さんだ。

取材中、相手の話に引き込まれて一緒に涙を流す。
反対に、失礼な態度をとられたときには、
捨て台詞を吐いて席を立ったそうだ。

「万年筆の先から血が滴る思いで書いている」

作者の魂が込められた人間ドラマは、
何年経っても色あせることなく、
読む人を山崎ワールドへ引きずり込んでいく。

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佐藤延夫 13年12月7日放送


nicolasnova
さようなら 山内溥

任天堂の元社長、山内溥(やまうちひろし)さんが亡くなったのは、
今年の9月のことだ。
花札やトランプを作っていた小さな会社は、
ファミリーコンピュータという空前の大ヒットで、
一躍、世界の一流企業にのし上がった。

しかし、その前に紆余曲折があったことはあまり知られていない。
タクシー会社、食品会社、事務機器、
育児関連用具、ラブホテルの経営まで手を出したが、
ことごとく失敗している。

「世間はよく成功者を手放しで尊敬してしまうが、
 成功者の言葉ならなんでもかんでも金科玉条のように
 あがめるのはおかしい」

成功と失敗。両方を知る男の言葉は、やけに説得力がある。

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