2014 年 4 月 27 日 のアーカイブ

松岡康 14年4月27日放送

140427-01
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散歩する哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

春には満開のサクラのトンネルとなり、
初夏には蛍が舞う京都、哲学の道。

哲学者西田幾多郎が
ここを歩きながら思索をした道だ。

哲学の道の中ほどの橋のたもとに、
西田の歌が刻まれた石碑がある。

 人は人 吾はわれ也 とにかくに 吾行く道を 吾は行くなり

西田は死ぬまで、
誰の生き方にも影響されず
自分の信じた道を歩みつづけた。

気持ちのいい春。
西田の様に思索をめぐらせ散策しよう。
そこに、自分だけの道が見つかるかもしれないから。

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松岡康 14年4月27日放送

140427-02

樽の中の哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

その変わった生き方と深い思想から
狂ったソクラテスと呼ばれた
古代ギリシアの哲学者ディオゲネス。

ディオゲネスは欲望から解放されて自足すること、
動じない心を持つことが重要だと考え、
暗闇を恐れず、おいしいものを食べたいとも言わず、
ただ走りまわるネズミの生き方に共感したという。

彼は大きな樽を見つけ、そこに住み、
まるで野良犬の様に広場でメシを貪り食った。

変人にも見えるディオゲネスだが、
古代ギリシア人にはカリスマ的な人気があった。
彼は言う。

 つねに死ぬ覚悟でいる者のみが、真に自由な人間である

自由を突っ走るディオゲネスは、
人類最古のロックンローラーだったのかもしれない。

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澁江俊一 14年4月27日放送

140427-03

反抗し続ける哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

戦後日本を代表する哲学者、鶴見俊輔。
彼の母、愛子はあまりに厳しい母だった。
大きな家に生まれた人間は必ず悪人になると信じ、
息子に成功や出世を目指すことをまったく望まず、
地道な仕事に就くことを心から願っていた。
そういう彼女の父は、明治日本の超大物、後藤新平なのだから
その複雑な心境は、想像するに余りある。

柱に縛りつけ、何度もひっぱたき、お前は悪人だ!となじる。
激しい折檻を繰り返す母に、幼い俊輔は徹底的に反抗する。
門限を破り、無理にたばこを吸い、
万引きをし、同級生をいじめ、何度も自殺未遂をはかる。
当然、友達はいない。学校に行かず読書にふけった。
中学も2度退学し、逃げるようにアメリカに渡った俊輔は
生まれ変わったように勉強し、ハーバード大学でトップの成績をおさめた。
戦後は常に弱者や少数者の側に立ち、権力に反抗する哲学者として活躍する。
まるで母が望んだ地道な人生を、すべて肯定するかのように。

鶴見俊輔は後に、母について、こう語っている。

 私のあらゆる著作は、
 おふくろが私にした仕打ちに対する答です。

母の暴力の奥深くにあるゆがんだ愛を、
鶴見は痛いほどわかっていたのだ。

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奥村広乃 14年4月27日放送

140427-04

早起きが苦手な哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

「我思う、ゆえに我あり。」で知られる
哲学者ルネ・デカルトは早起きが苦手だった。

10歳で名門ラ・フレーシュ学院に入学したが、
生まれつき身体が弱く朝寝坊を許されていた彼は、
ベッドの中でさまざまな事を考えるようになる。

精神を向上させるためには、
学ぶことよりもより多く熟考していくべきである。

デカルトにとっては、
自分自身で考え抜くことが、
人間として生きることなのだ。

晩年、デカルトは
スウェーデンの女王のために授業を行うが、
毎朝5時からの授業は早起きが苦手なデカルトの身体に堪え、
たちまち体調をくずし、肺炎で亡くなった。

デカルトはこんな言葉も残している。

 精神を思う存分働かせたいと願うなら、
 体の健康に留意することだ。

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澁江俊一 14年4月27日放送

140427-05

考える哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

哲学、という言葉が持つ
抽象的でとっつきづらい空気を
考える、という言葉で、
すべての人のものにしようとした池田晶子。

哲学者ではなく、文筆家と名乗り
他の哲学者たちと一線を画した池田は
2007年、46歳の若さで世を去った。

彼女は決してやさしいだけではなく、
考えることをしない世の中に、
厳しい言葉も残している。

 地球人類は失敗しました。
 生存していることの意味を問おうとせず、
 生存することそれ自体が価値だと思って、ただ生き延びようとしてきた。
 医学なども、なぜ生きるのかを問わず、
 ただ生きようとすることで進歩した。

 人がものを考えないのは、死を身近に見ないからだと思う。
 一番強いインパクトは死です。人がものを考え、
 自覚的に生き始めるための契機は死を知ることです。
 精神の在り方が変わらなければ、
 世の中は決して変わりません。

死の瞬間、池田は何を考えたのか。
それを考えてみることも、私たちの宿題だ。

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礒部建多 14年4月27日放送

140427-06

音楽と哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

哲学者には、音楽を愛する者が多い。
ピタゴラスは、純正音階を考え出した。
ルソーは、日本ではむすんでひらいての童謡で知られる
オペラ「村の占い師」を残した。

若いニーチェもまた、哲学に傾倒する前、
精力的な作曲活動に取り組んでいた。
正式な音楽教育は受けず、自分の耳を頼りに
13歳で初めての曲「From ”Allegro”」を完成させる。

数多くの作品を残すものの、注目も、評価もされなかった。
限界を感じ、音楽から遠ざかりながらも、
ニーチェの思想の片隅には、常に音楽への強い想いがあった。

著書、「悲劇の誕生」では、
他の芸術よりも音楽を
遥かに優れたものとして扱っている。

もしかしたらニーチェは、音楽家として生きる夢を、
最期まで捨てきれなかったのかもしれない。
晩年には、こんな言葉を残している。

 私ほど、本質的に音楽家であった哲学者はいない。

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奥村広乃 14年4月27日放送

140427-07

お酒と哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

ドイツの哲学者イマヌエル・カント。
批判哲学を提唱し、
ドイツ古典主義哲学の父と言われている。

彼の書いた哲学書が難しいせいか、
気難しい孤独な老人を想像する人も多い。
しかし実際は、話題が豊富でおもしろく、
貴族の食事会によく招かれる人物であった。

カントはこんな言葉を残している。

 酒は口を軽快にする。
 だが、酒はさらに心を打ち明けさせる。
 こうして酒は道徳的性質、
 つまり心の素直さを運ぶ物質である。

お酒を飲むと素直になれる。
哲学者も我々も、それは変わらないようだ。

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礒部建多 14年4月27日放送

140427-08
Robert Snache
夜空と哲学者

今日、4月27日は哲学の日。

「万物の根源は水である」と唱えたことで知られる
記録に残る最古の哲学者、タレス。

古代ギリシアの名家に生まれ、
幼い頃から様々な才能に恵まれたタレスは、
天文学が好きで毎夜、空を見上げては星を観察していた。

ある日、夜空に夢中になるあまり、
タレスは溝に気づかず落ちてしまう。
通りかかった女性は、その姿を見て
「学者は遠い星のことはわかっても、自分の足元のことはわからないのか」
と笑ったという。

それでもタレスは、夜空を見上げた。
そして後に、世界で初めて日食の存在を
予測したと言われている。

足元ばかり見ては、何も生まれない。
タレスが、いつもそうしていたように、
たまには春の夜空を見上げて、歩いてみよう。

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